日経SDGsフォーラム シンポジウム

持続可能な社会へ企業動く 環境配慮、経営の主題

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 <企業講演>

 CO2排出、50年ゼロへ

 セブン&アイ・ホールディングス 代表取締役社長 井阪隆一氏

 セブン&アイグループの企業理念は「ステークホルダーの皆様から信頼される誠実な企業であり続ける」だ。2021年に策定した中期経営計画では社会課題の解決を中核に位置付けた。企業として収益性、成長性、持続可能性を高めながら持続可能な社会の実現を目指す企業としてサステナブル経営を推進している。

 19年に発表した「GREEN CHALLENGE 2050」では、30年の二酸化炭素(CO2)排出量を13年度比50 %削減、50年には実質ゼロの目標を掲げた。目標実現のため省エネ対策の強化、太陽光パネル設置による創エネ、再生可能エネルギーの調達を3つの柱として取り組む。

 プラスチック対策では「リデュース」「リユース」「リサイクル」の3Rを推進する。総菜容器のフタをトップシールに切り替えるなど、プラスチックの使用量を大幅に削減。リユース可能なパッケージ開発と、再利用の循環ネットワークも計画中だ。サーキュラーエコノミー(循環型社会)を地域社会と共に実現するため、ペットボトルの回収をさらに強化する。

 30年にはオリジナル商品の容器素材の半分を環境配慮型素材に切り替えるべく取り組みを進めている。加えて食品ロスや持続可能な調達に対する数値目標とアクションプランも策定した。

 14年の重点課題策定から7年が経過した現在、企業が解決すべき社会的課題は変化した。今後も有識者との対話を通して重点課題の改定を進めていく。

 再エネ使い複合機製造

 リコー 代表取締役 社長執行役員 CEO 山下良則氏

 当社は、創業者・市村清が掲げた三愛精神「人を愛し、国を愛し、勤めを愛す」の実践はSDGsの理念にも通じると考え、SDGsから12ゴールを抽出。7つのマテリアリティー(重要課題)を設定し社会課題解決に取り組む。

 全社の経営目標を財務とESG目標に分け、将来財務のKPI(重要業績評価指標)を設定。活動目標と実績も公表している。役員報酬は利益額や資本収益性に加えESGの外部評価も組み込み、社員はSDGsと自分の業務の関連を言語化するなど意識付けを強化している。

 そのほかにも国内販売会社のリコージャパンには顧客向けにSDGsを説明し実践を支援する「SDGsキーパーソン制度」がある。欧州ではESG対応がサプライヤー選定条件になりつつある。2020年度はESG要求によるグローバル商談が100億円に達した。

 環境に関しては1976年に環境推進室を設立し、98年に環境経営を提唱。環境保全と利益創出を同軸で進めることを環境経営と定義した。

 2017年には事業で使う全電力を再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的枠組み「RE100」に参加表明した。複合機の組み立て5拠点を全て再エネ電力で賄うなどの取り組みを進める。

 SDGsへの取り組みは5~10年後の財務を支え、社員に働きがいを感じてもらうために不可欠だ。社会課題解決と事業成長の同時実現に挑戦しステークホルダー(利害関係者)に支持される会社であり続けたい。

 自然災害リスク、AIが評価

 MS&ADインシュアランスグループ ホールディングス 取締役社長 グループCEO 原典之氏

 当社は気候変動の緩和と適応、自然資本の持続可能性向上を重点課題として様々な取り組みを進めてきた。本社ビルの電力使用に伴う二酸化炭素(CO2)排出をゼロにするため、風力発電とバイオマス発電を組み合わせて導入した。

 サプライチェーンでのCO2削減に向け、保険によるカバー、防災・減災のリスクコンサルティングサービスを提供している。2021年8月には企業向け火災保険で被災建物の復旧時に新たにCO2排出量削減設備を設置する場合の追加費用を補償するカーボンニュートラルサポート特約を販売した。

 顧客への気候変動リスクの伝達も重要な責務だ。米ジュピターインテリジェンスと連携し、自然災害の発生リスクをAIで定量評価する気候変動リスク分析サービスを開発した。

 地球温暖化対策ではCO2を吸収する森林の資源確保も重要だ。インドネシア熱帯雨林再生プロジェクトでは14年間で約3万1000㌧相当のCO2を吸収した。さらにアジア拠点では国際非政府組織(NGO)と連携し、東南アジアの生物多様性保全活動として、森林再生、マングローブ植林、希少野生動物の保護などに取り組んでいる。

 レジリエント(強じん)でサステナブルな社会の実現には自然資本や安定した気候システムなど健全な地球環境の土台があってはじめて実現する。今後も様々な社会課題の解決に向け、多様なステークホルダーと連携して取り組みを進めていく。

 透明フィルムで食品ロス削減

 凸版印刷 代表取締役社長 麿 秀晴氏

 当社はSDGsへの貢献として「TOPPAN Business Action for SDGs」を策定、注力分野を9つに特定した。

 その事例の一つが食品ロス削減に向けたSX(サステナブルトランスフォーメーション)とDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みだ。当社が開発した世界最高水準のバリア性を持つ透明フィルム「GL BARRIER」を食品パッケージに使用して賞味期限を延ばすことで食品ロス削減に貢献している。

 またDX推進コンセプト「Erhoeht-X(エルヘートクロス)」を掲げ、流通・サプライチェーンでのDXにも取り組む。例えば食品ロスは、製造現場での作り過ぎ、流通での返品、生活者の廃棄など様々な過程で発生する。これらを適切な量に調整するにはデータの同期化がカギと考え、リアルとデジタル技術を融合させた支援を行っている。

 小売り・流通部門では電子チラシ「Shufoo!(シュフー)」を運営。課題であった商品情報の一括管理ができるシステム「PROMO CORE(プロモコア)」を開発した。さらに小売企業と中間卸企業のデータをつなぐ共通商品データ基盤を今年度中に稼働予定だ。

 そのほかにも脱炭素社会への貢献などを定めた「環境ビジョン2050」や、人権課題に向き合うための「人権方針」を公表。SDGs達成に向けステークホルダーとの共創で高い課題を突破していく。

 抗体薬物複合体でがん治療薬

 第一三共 代表取締役社長 兼 CEO 真鍋 淳氏

 我々のパーパスは世界中の人々の健康で豊かな生活に貢献することだ。2016年に既存事業からがん事業に大きくかじを切り、現在に至る。がんによる世界の死者数は900万人以上で医療ニーズが高い。

 当社は抗体薬物複合体(ADC)を使ったがん治療薬を乳がん、胃がんの適応で発売。プラットフォーム技術であるADCは、抗体を換えることで様々な種類のがん新薬をつくり出せる。

 乳がんと胃がん治療薬は世界37カ国・地域で承認取得しているが、より多くの患者に届けられるよう英アストラゼネカとパートナーシップを結んだ。当社は新型コロナウイルスという新たな脅威にも取り組む。国内にワクチンの自社製造拠点を持ち、平時からインフルエンザワクチンなどの安定供給を行ってきた。今回はこうした生産基盤を生かし、当社工場でアストラゼネカ製コロナワクチンの製剤化に取り組んだ。

 同ワクチンは日本政府や途上国向けワクチンの国際的調達枠組み「COVAX(コバックス)」を通じて東南アジアなどへ提供されるなど、当社は途上国への医療アクセス拡大に貢献した。メッセンジャーRNAワクチンの自社開発も進めており、22年内の国内実用化を目指す。

 今回のパンデミックを経験し、当社は世界中の人々の健康で豊かな生活に貢献するというパーパスに立ち返った。企業価値創造を通じてSDGsに貢献していくことを再認識している。

 街の魅力、再び耕す

 大和ハウス工業 代表取締役社長CEO 芳井敬一氏

 かつて多くの家族が夢を持ち移り住んだ郊外型住宅団地「ネオポリス」は全国にあるが、中には高齢化が進み活気が失われている街もある。そこで街の魅力を再び〝耕す〟再耕事業を2015年から開始した。

 街づくりはハードだけでなくソフトの再耕も重要だ。あるコミュニティー協議会の会長が言った「街があり続けるためには世代交代とともに共助が必要」の言葉が心に残っている。街や住民の人生を循環させることが必要だと感じた。

 兵庫県の緑が丘ネオポリスにある施設「ココランハウス」では当社が開発したミニ胡蝶蘭(こちょうらん)を障害者や高齢者が栽培している。皆が自分らしく働ける街の魅力を街の外へもつなげていきたい。そのほかにも廃校になった学校を再建し、活気を取り戻す取り組みも進めていきたい。

 我々が明るい未来を切り開くという思いを込めてつくったものがある。創業者・石橋信夫の生誕100周年を記念して奈良県に開設したみらい価値共創センター「コトクリエ」だ。従来の社員研修の場という狭い枠組みではなく、地域住民にも開かれた施設だ。多様な視点や価値観が融合し、新しい可能性が無限に広がる未来を目指している。

 さらに創業100周年となる55年を見据えた「〝将来の夢〟プロジェクト」も始めた。オンラインで開催したサミットには約千人の社員が参加した。SDGsは創業当時からの考えに通ずるものだ。この考えを今後も引き継いでいきたい。

 知見集め社会に貢献

 アサヒグループホールディングス 代表取締役社長 兼 CEO 勝木敦志氏

 当社グループのミッション「期待を超えるおいしさ、楽しい生活文化の創造」の実現にはサステナビリティーへの取り組みが不可欠だ。①環境②人③コミュニティー④健康⑤責任ある飲酒――の5つが我々のマテリアリティーであり、合わせて10の取り組むべきテーマを設定した。特に「気候変動への対応」など重要と思われるテーマは経営資源を集中させて取り組みを重点化していく。

 気候変動への対応では2050年までに二酸化炭素(CO2)排出実質ゼロを目指す。製造工程に加え容器包装の革新や物流での共同配送やモーダルシフトなど、バリューチェーン全体で積極的に推進。20年10月には「RE100」に加盟した。

 21年には国内の21工場で購入する電力を再生可能エネルギーに切り替えた。国内グループ全拠点の購入電力は54%まで再エネ化が進み、年間6万7000㌧のCO2排出を削減する。25年までに国内全拠点での再エネ化を目指しており、海外でも全工場の9割超で再エネ化が進む見通しだ。

 自社技術を活用したCO2排出量削減にも取り組む。ビール工場排水処理由来のバイオメタンガスを燃料電池の発電に活用する画期的な技術を開発。21年9月からは水素とCO2からメタンを合成するメタネーション実証試験も開始した。

 今後もビール酵母、乳酸菌などの微生物や発酵に関する知見の活用と独自の技術力を結集したプロセスイノベーションで社会に貢献していきたい。

 

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