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藤井聡太四冠を生んだ「指さなかった手」の蓄積 谷川浩司九段に聞く

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 「よく泣く」子の印象

 こういった強さの萌芽(ほうが)は少年時代からあったのか? 藤井氏を少年時代から知る谷川氏に若手の将来性をどう見分けるのか聞くと、修業時代とプロ棋士となってからで見るポイントを変えるという。「少年時の初心者の間は、それほど考える内容はない。長考するのは敗北を恐れているだけだ」という。負けることを恐れず、どんどん対局して経験値を高める少年が一段上のランクに到達できるようだ。一方、プロ棋士となってからは「与えられた持ち時間を残して何回も負ける若手は評価しない。プロとしての心構えができていない」という。

 約40歳の年齢差があるものの、谷川氏と藤井氏は「中学生棋士」という以上に、同じ関西将棋界で育った共通点が少なくない。なかでも大きな共通点は、一流棋士になるための必要条件とも言うべき「負けず嫌い」だ。谷川氏が少年時に負けたときに、駒をかんで悔しがったエピソードはよく知られている。歳月を経て谷川氏は、ある将棋イベントで藤井少年と指導将棋を指した。形勢は上手(谷川氏側)有利、ただイベント終了の時刻も迫ってきたため「引き分けにしようか」と谷川氏は提案したところ、藤井少年は将棋盤を抱え泣きじゃくったという。谷川氏にとって藤井少年の最初の印象は「将棋が強い」ではなく「よく泣く」子だった。

 しばらくは藤井一強時代が続くかもしれない。藤井氏には、将棋界の第一人者としての立ち居振る舞いを求められる場面が増える。谷川氏は20代から関西経済界のリーダーに接して人脈を築き、後に将棋連盟会長としてリーダー役を果たした。「盤上で藤井さんにアドバイスすることはない。ただ自分も若い時から各界のトップの人々と対等の立場で接してもらった。当時学んだことは現在も生きている」としている。

 (松本治人)

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