ヘルステックサミット2021特集

キャンサーエコシステム構築 がんに関わる課題解決へ アフラック生命保険 取締役上席常務執行役員の宇都出公也氏が語る

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わが国におけるがん保険のパイオニアであるアフラックは、がん患者や家族を取り巻く様々な課題を社会全体で解決するための「キャンサーエコシステム」の構築を推進している。目指すのは、医療機関やヘルスケアに近い業種の企業に限らず、様々な強みを持つ企業や団体との連携により、がん患者を生涯にわたって社会全体で支える枠組みづくりだ。どのような経緯を経て、キャンサーエコシステムの構想にたどり着いたのか。アフラック生命保険 取締役上席常務執行役員の宇都出公也氏が「ヘルステックサミット2021」で行った講演の内容を紹介する。

 日本初のがん保険を発売 患者と家族の経済的・精神的負担を軽減

 1974年、国内初のがん保険の販売と同時にアフラックの歴史は始まった。治療法の確立と共にがんの生存率も向上している現在とは違い、1970年代、がんは不治の病というイメージが強く、患者本人への病名告知も非常に珍しかった。そのため当初は「被保険者が告知を受けないのに、どうして給付金・保険金の請求や支払いができるのか」といった批判も受けた。そこで、被保険者の家族でも給付金・保険金の給付申請ができる仕組みをつくるなど、がん保険に関するハードルを一つひとつ乗り越えてきた。そうした挑戦の積み重ねの中で契約者数を伸ばし、現在では約2400万件(2020年度末)の契約を抱えるまでに成長している。

 成長の原動力となったのは、「がん患者と家族の経済的・精神的負担を軽減したい」という想いだ。創業メンバーは、がんに罹(り)患した本人や家族が、治療や医療費に関する不安を抱えるのみならず、就学や就労等、様々な場面で困難に直面する姿を目の当たりにした経験から、保険を通じ、がんによって生じる様々な課題の解決に貢献したいという志を持っていた。その想いは現在も当社の事業の土台であり続けている。

 事業を行う中では、正確かつ迅速な給付金・保険金の支払いなど、保険会社として当然の責務を果たすことに力を注ぐ一方で、がん患者や家族からこぼれ落ちてくる思いを受け止め、自分たちにできることがもっとあるのではないかと常に考え続けてきた。

 例えば保険給付申請の際、契約者や家族は担当者に様々な話をしてくださる。特に患者本人へのがん告知が浸透する以前は、患者の配偶者や両親などは、大切な人ががん宣告をされた事実を一人で背負うしかなく、思いを吐露する場があることをたいへん感謝された。このことを通じてがんについて気軽に相談できる場の必要性を強く実感し、1982年には「がん電話相談」を開始した。これは、がん研究会有明病院の医師や看護師に様々な相談ができるサービスで、当社の保険契約者でなくとも利用できるなど、対象者を限定しないがん電話相談サービスとしては国内初の事例であった。また2007年には、保険の付帯サービスとして「プレミアサポート」を開始。がん治療に精通した専門家による病気や治療法の説明などを通じ、納得のいく治療選択ができるよう支援している。

 連携・協業により 「キャンサーエコシステム」の構築を目指す

 保険の営業活動をがん啓発と一体で行うなど、当社は創業以来、事業を通じて社会と共有できる価値を創造するCSV(Creating Shared Value)経営を実践してきた。社会と共有できる価値を創造するためには、がん保険の販売を通じてがん患者や家族の経済的・精神的負担を軽減することのみならず、がん保険の販売を通じて社会にもたらすマイナスの影響を極小化することへの配慮も必須だ。例えば、保険販売によってがんへの恐怖をあおるようなことがあってはならない。CSV経営の実践には、社会全体の便益と費用に目を凝らしながら事業を行う慎重さと視野の広さが求められる。

 がん保険は本当に患者や家族のお役に立っているのか、もっとお役に立つにはどうすべきか、当事者の立場に立って改めて考えたいという想いから、2018年には、がん研究会有明病院の名誉院長である武藤徹一郎先生を座長とする「『がん患者本位のエンゲージメント』を考える会」の創設に携わり、当社は事務局を務めた。がん診療に関わる医療関係者や患者団体の代表者、社会学者などが集まり、がん患者や家族が抱える課題や、社会の関わり方などを議論した。

 真に「患者の立場に立つ」ことは、医師や保険会社の社員といった立場を棄て去り、人間として当事者の立場に立つことを指す。実際にはそれぞれの立場を取り払うことはできないが、それでも何かできることがあるかもしれないという気持ちで懸命に寄り添う姿勢が大切だ。その上で、社会全体としてがんの当事者に何ができるかを検討するのが、「『がん患者本位のエンゲージメント』を考える会」の目的であった。

 2021年には、議論の成果として報告書を取りまとめ、がんに関する社会的課題の解決に向けた3つのビジョンと10のアクションを提示。当社は現在、これらを軸として、「キャンサーエコシステム」の構築を推進している。

 キャンサーエコシステムとは、通常生活から、がんの診断が下され、告知、治療、治療後の生活とつながっていくサバイバージャーニー(がん患者がたどる人生の道のり)において、がんの当事者である患者や家族を生涯にわたって社会全体で支える取り組みだ。がん保険の販売からさらに踏み込んで、がんにまつわる課題解決に貢献するエコシステムの構築を目指す。

 がんを取り巻く課題は、治療によって心身にかかる負担や経済的問題に留まらず、就労や就学に関することなど多岐にわたる。また、医療機関だけ、あるいは当社のような民間企業一社だけの独立した取り組みでは、できることが限られてくる。そこでキャンサーエコシステムでは、医療者や職場・学校、行政、患者団体やNPO、企業など、社会の様々なステークホルダーが連携・協業するプラットフォームの構築を目指している。

 キャンサーエコシステムでは、がんの当事者が直面する課題を社会課題と認識し、様々な強みを持つ企業や組織との協働で課題解決に取り組む。今後、同じ志を有する企業や団体と手を取り合い、エコシステムのさらなる深化を目指していく。

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