BizGateリポート/人材

理にかなう非常識 新庄型リーダーが組織の同調圧力砕く 同志社大学政策学部教授 太田 肇

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

 不祥事抑制にもポジティブなフィードバックが有効

 第2に、不祥事や仕事のミスを減らすにも、ネガティブよりポジティブなフィードバックを増やすことが望ましい。

 人は賞賛されたり、認められたりすると自尊心が高まるが、それによって不祥事が抑制されることを裏づける研究結果がある。

 また一般社団法人日本ほめる達人協会理事長の西村貴好氏は、「ほめる」仕事を始めたいきさつについて、つぎのように語る。

 西村氏はもともと企業などから覆面調査を依頼され、社員の欠点をとらえて「ダメ出し」するのを仕事にしていた。ところがいくら欠点を指摘しても改善されないばかりか、追い詰められた社員がミスをするケースも後を絶たなかった。そこで発想を転換し、欠点ではなく長所やよいところを見つけてほめるようにした。すると、やる気がアップするばかりか、欠点も自然に直っていたという。

 社員に失敗を恐れず挑戦するよう促すため、「大失敗賞」という賞を設けて表彰している会社もある。

 同調圧力を逆手にとって新風を

 第3に、ネガティブ思考を変えるには組織の同調圧力を逆手にとることである。

 いくら失敗を恐れるなとか、長所を積極的にアピールしろとか言っても、考え方や行動はなかなか変わらない。真に受けて先走ったら孤立し、損をすることを過去の経験から学んでいるからだ。

 そこで必要なのが、信頼できるロールモデルである。新庄氏のように同調圧力と無縁のリーダーがトップに就けば、メンバーは安心して一歩を踏み出せる。新たな風が吹けば、同調圧力が逆向きに働いて組織の空気が一変することがある。

 そうはいっても懸念されるのはチームワークとの両立だろう。メンバーの意識が外を向き、個人プレーに走ればチームがバラバラになり、組織のパフォーマンスが落ちると考えるのはもっともである。

 「役割と行動の切り離し」でチームワークと両立

 それを防ぐため参考になるのがE・H・シャインのいう「創造的個人主義」(creative individualism) である。中枢の規範は受け入れるいっぽう、周辺の規範は拒否する姿勢を意味する。今風に言えばコンプライアンスや組織人としての行動規範は遵守しながら、闇雲に同調しないことだ。新庄氏はそれを体現している。

 またデジタル時代における組織と個人の関係として、私は「役割と行動の切り離し」を提唱している。組織・チームの一員としての役割を果たせば、メンバーは一人ひとりが自律的に行動すればよい。インターネットやITツールを使うことで、厳しく管理されなくても組織・チームに貢献できるようになった。それによって、社員のモチベーション・アップとチームワークが両立できるのである。急速に広がるリモートワークやオープンイノベーションなども、その理念に沿ったものだといえる。

 日本企業、日本社会の低迷が続く一因はイノベーションの不足にある。そしてイノベーションを阻害しているものが、過剰な同調圧力の存在だ。組織や社会を息苦しいものにしている原因もそこにある。過剰な同調圧力を打ち破り、負のスパイラルを正のスパイラルに逆回転させるには、脱常識の「新庄型」リーダーこそ必要ではなかろうか。

太田肇(おおた・はじめ)
同志社大学政策学部・同大学院総合政策科学研究科教授。神戸大学大学院経営学研究科修了。経済学博士。専門は組織論、とくに「個人を生かす組織」について研究。日本労務学会常任理事。組織学会賞、経営科学文献賞、中小企業研究奨励賞本賞などを受賞。『「承認欲求」の呪縛』(新潮新書)、『「ネコ型」人間の時代』(平凡社新書)、『公務員革命』(ちくま新書)、『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)、『個人尊重の組織論』(中公新書)、『「超」働き方改革』(ちくま新書)など著書多数。近著に『同調圧力の正体』(PHP新書)

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。