日経SDGsフォーラム シンポジウム

持続可能経営が深化 「次の一手」模索広がる

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 100年後の〝いざ〟も支える

 東京海上日動火災保険 取締役社長 広瀬伸一氏

 東京海上グループは地球環境を持続可能な形で未来世代に引き継ぐ取り組みを進め、気候変動対策推進、災害レジリエンス(強靭性)向上を重点課題に掲げてSDGsを推進している。

 「〝いざ〟を守る」取り組みでは人工衛星画像など最新デジタル技術を取り入れた保険金支払いの迅速化や、コロナ対策と災害対応を両立する遠隔査定システムを活用。地震による被災直後の生活に備えるEQuick保険を発売した。「〝いつも〟守る」取り組みでは災・減災、早期復旧のためのソリューション開発・提供にも注力。災害体験AR(拡張現実)や災害時の事前避難を支援する実証実験を開始した。

 地球を守る取り組みでは、洋上風力発電事業のリスクを切れ目なく補償する洋上風力発電向けパッケージ保険を提供。マングローブ植林も行っている。

 100年後もお客様や地域社会の〝いざ〟を支え、人々から信頼される良い会社を目指してさらなる取り組みを進めていきたい。

 売り上げ、課題解決に充当

 筑波大学 ビジネスサイエンス系 教授 西尾チヅル氏

 地球環境や社会課題解決を目指したマーケティングには2つのアプローチがある。事業活動に起因する課題ではエコロジー市場の創造と資源循環を企図したマーケティングが不可欠だ。例えば有機野菜の購入が健康につながるなど生活の中で価値を見いだせれば市場は拡大する。家族や友人などに影響を受ける社会規範評価も促進要因だ。

 事業との関連が低い課題にはコーズ・リレーテッド・マーケティングが有効だ。これは売り上げの一部を社会的課題の解決に役立てることを顧客に事前に示す手法。被災地復興など消費者に共感されやすい対象を選ぶのがよい。脱炭素時代のマーケティング戦略ではブランド価値や市場浸透の仕組みづくりが重要だ。

 途上国女性を経済支援

 国際協力機構(JICA) 理事 萱島信子氏(肩書は開催当時)

  JICAのミッションは人間の安全保障と質の高い成長で、誰一人取り残さない包摂的な社会を目指すSDGsは親和性が高い。テーマに挙げたジェンダー平等はSDGsのすべての目標達成のカギになるものだ。

 多くの途上国ではコロナ禍で女性の収入低下と格差問題が深刻化した。JICAは女性の経済的エンパワーメント推進、ジェンダー平等なガバナンス推進を優先課題とし、女性のためのファイナンスイニシアチブである2X(ツーエックス)チャレンジなど途上国の女性の金融アクセスを支援。9月には途上国のジェンダー平等、女性のエンパワーメント促進事業に限定して調達資金を充当する「ジェンダーボンド」を発行した。

 万博、未来社会の実験場に

 経済産業省 商務情報政策局 商務・サービスグループ 参事官(併)博覧会推進室長 滝沢 豪氏

  大阪市・夢洲で2025年に開催する大阪・関西万博は「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに未来社会の実験場を目指している。TEAM EXPO 2050は理想の未来社会づくりを目指すプログラム。世界最大級のソーラー船で世界を巡る「ポリマ号のブルー・オデッセイ」や、ガーナのスラム街の貧困問題をアートで変える活動など現時点で237件の共創チャレンジの登録があった。

 そのほかにも小中学生がSDGsや万博を学ぶジュニアEXPO2025も展開。空飛ぶクルマを活用したスマートモビリティー、水素による発電など未来を感じさせる実証を検討していく。SDGs達成に貢献する万博として様々な取り組みが始まっている。

 水素経済化、日本がリード

 Innovation for Cool Earth Forum(ICEF) 運営委員会議⻑、元国際エネルギー機関(IEA)事務局⻑ 田中伸男氏

  新型コロナを機に再生可能エネルギー中心の電力の時代へ動きだした。巨大IT(情報技術)企業も2030年カーボンニュートラル実現を目指し、金融や需要側が主導するエネルギー転換が始まった。欧州の石油メジャーも脱石油に動き始め、世界中が脱炭素に向かっている。

 エネルギー転換のカギはクリーンな水素だ。日本は水素経済化をリードしてきた。昨年のカーボンニュートラル宣言によって策定されたグリーン成長戦略でも水素は重要分野とされている。

 日本の水素液化などの技術は世界のサプライチェーン構築に役立つ。今後も女性や若い世代の参加を促しつつ、世界の脱炭素化に向けた議論に貢献していきたい。

企業で意識に差、発想転換が必須
 SDGsに対する意識は日本でどれほど広がっているのか。国内企業を対象にした今年6月の帝国データバンクの調査では「SDGsに取り組んでいる」「取り組みたいと思っている」の合計が39・7%と前回の24・4%よりも15㌽強増加したものの、「重要性を理解できるが取り組んでいない」「意味もしくは重要性を理解できない」の合計も50・5%と前回(47・7%)から増えた。
 企業規模別で見ると「SDGsに積極的」と回答したのは大企業の55・1%に対し、中小企業36・6%、小規模企業31・6%と意識の差が大きい。回答した中小企業からは「目標が壮大過ぎて取り組みようがない」「コスト・人的資源等から新たな取り組みへのハードルが高い」といった戸惑いの声が上がる。
 こうした企業間の意識の差を埋めるにはSDGsへの行動がコスト要因として捉えられがちな発想の転換を図り、本業を通じた社会課題の解決が持続的な企業成長につながるという認識の浸透が求められる。

 

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 主催:日本経済新聞社、日経BP    

 メディアパートナー:FINANCIAL TIMES 

 後援:内閣府、外務省、経済産業省、環境省、日本経済団体連合会  

 協力:日経ESG経営フォーラム、国際協力機構(JICA)

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