日経SDGsフォーラム シンポジウム

持続可能経営が深化 「次の一手」模索広がる

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 [講演]

 脱炭素、投資の好機

 野村アセットマネジメント CEO兼代表取締役社長 小池広靖氏

 地球規模の課題解決とSDGs達成に向けた重要課題として①インベストメント・チェーンの強化②健全な地球環境の実現③ガバナンスを通じた企業価値の向上④人権が尊重される社会の実現――の4つのゴールを設定した。TCFDの方針に基づく責任投資リポートも毎年公表し、機関投資家としての活動状況を開示している。

 インベストメント・チェーンは投資を通じてもたらされる好循環だ。企業とのエンゲージメント(対話)を通じて企業価値を向上させ、投資家へ利益還元する。企業のSDGsへ取り組みの後押しは社会的価値を創出し、持続可能な社会の実現につながる。

 目標達成に向けて新たな技術開発が必要となり、世界中のあらゆる分野で大規模な投資が始まると予想される。そんな中、今年8月には投資信託「脱炭素ジャパン」を設定した。脱炭素社会に向けた動きを投資の好機と捉え、脱炭素化に積極的に取り組む日本企業に投資する。

 一気通貫で再エネ提供

 afterFIT CCO(チーフ・コミュニケーション・オフィサー兼チーフ・カーボンニュートラル・オフィサー) 前田雄大氏

 外務省で13年間外交に携わる中で脱炭素は覇権争いであり、日本はその転換に置いていかれるのではないかと強い危機感を抱いた。脱炭素社会への変革はリスクを伴う半面、ビジネスチャンスも出てくる。リスクを最小化し、機会を捉えた者が生き残る時代だ。気候変動や脱炭素は経営そのものであり、経営層のコミットメント(関与)が必要だ。

 日本の脱炭素化における課題の一つが国レベルでのグリーン電力の不足。グリーン電力は天候や自然条件に左右されるため不安定で、需給調整の問題もある。当社はグリーン電力の発電・送電・売電のオールメニューでこうした課題に取り組んでいる。

 国土の狭い日本で人工知能(AI)や衛星データを駆使し、発電所の土地探しから再生可能エネルギーの供給まで、当社は一気通貫で手がけられる。初期負担ゼロでグリーン電力に切り替えられる方法を提供するなど、日本のビジネス界の脱炭素化をサポートしていきたい。

 ライブ技術で社会貢献

 17LIVE 代表取締役/Global CEO, 17LIVE Inc. 小野裕史氏

 スマートフォンがあればいつでも、どこからでも、誰でも自分の生番組を世界に配信できるライブテクノロジーを活用したサービスを提供している。238の国・地域で5千万人以上に利用され、日本でトップクラスのライブ配信アプリだ。

 配信・視聴ともに無料だが、視聴側がオンラインでデジタルのギフトを購入してライブ配信者に贈ることができ、ギフトの量に応じて配信者に17LIVEから報酬が支払われる。これは個人が個人を応援する今までにないビジネスモデルだ。

 現在は高齢者や障害者、シングルマザーといった社会的弱者の方もライブ配信者として活動しており、社会との接点ができるだけでなく収入にもつながるという価値を生み出している。今年9月にはライブ配信のプラットフォームを活用した番組“みんなの17LIVE”をスタートした。様々な社会的弱者の人たちにライブテクノロジーで新たな価値提供をもたらし、社会貢献の幅を広げていきたい。

 役員報酬にESG反映

 三菱UFJフィナンシャル・グループ 取締役 代表執行役社長 グループCEO 亀澤宏規氏

 経営環境が過去に例を見ない速さで変化する中で、当社は国内収益基盤の徹底強化、グローバル事業の強靭(きょうじん)化、企業カルチャーの変革を課題として認識。金融機関の責務を果たしながら、社会課題への取り組みを強化してきた。

 サステナビリティー経営では優先的に取り組む10の課題を特定。気候変動対応・環境保全は最重要課題の一つとして「MUFGカーボンニュートラル宣言」を公表した。

  2050年までの投融資ポートフォリオの温暖化ガス排出量ネットゼロを目指す。自社独自での脱炭素化も進め、今年6月には銀行の国内契約電力を100%再エネ化。再エネファンド創設や東京大学との産学連携、水素バス支援などの取り組みも実施する。

 このほかグループ業務純益の1%を社会貢献に拠出する寄付プログラムを活用する。役員報酬はESG(環境・社会・企業統治)評価の改善度を反映し、環境に関して積極的な情報開示を行うなど、ガバナンスを強化していく。

 ため池使い太陽光発電

 東京センチュリー 取締役 執行役員副社長 大串桂一郎氏

 当社の祖業であるリースは3R(リデュース、リユース、リサイクル)を伴う循環型ビジネスモデル。循環型経済社会の実現への貢献を企業理念に掲げている。

 環境・エネルギー事業では京セラとの共同事業を中心に、全国100超の太陽光発電所を所有・稼働。ため池や貯水池を活用する水上太陽光発電、農地を活用する営農型太陽光発電を通じ国内太陽光発電の適地不足を解消する。

 国内オート事業では子会社の日本カーソリューションズを中心にEV(電気自動車)の導入を推進。EVを活用したエネルギーマネジメントの実証実験も準備中だ。

 航空機事業では、燃料効率がいい最新鋭機の積極導入で二酸化炭素(CO2)排出削減に貢献。「空飛ぶクルマ」を開発する独ボロコプター社や、国産バイオジェット燃の開発を行うユーグレナに出資して支援している。

 今後も各業界で知見と実績を有するパートナー企業との連携を最大限活用し、社会課題の解決に取り組んでいく。

 開示・評価手段に課題

 早稲田大学大学院 経営管理研究科教授 根本直子氏

 世界の投資家はESG要因を重視する傾向にある。ESGに優れた企業の株価はコロナ禍でも落ち込みが小さい。

 ESG投資は企業の行動変容を促し、企業価値や社会にポジティブな影響を与える可能性がある。近年では気候変動やサプライチェーンの問題に取り組む日本企業も増えた。一方、新しい投資手段のため開示ルールや評価手法には課題も多い。企業側からも意見を出し、より良い基準づくりに参加することが必要だ。

 欧米企業はSDGsやESGについての取り組みを事業拡大の好機とみている。技術や現場力に優れた日本企業にとってもチャンスは大きい。多様なステークホルダーとの対話で視野を広げ、企業価値を高める方策を取ってほしい。

 免疫で健康課題に注力

 キリンホールディングス 執行役員 ヘルスサイエンス事業部長 佐野 環氏 

 キリングループはCSV経営を進める中で人々の健康をサポートするヘルスサイエンス事業に注力。ビール事業で培った発酵技術を基礎に35年以上免疫研究を続けてきた。

 2010年に免疫細胞の司令塔・pDCを直接活性化させるプラズマ乳酸菌を発見。飲料などの商品を展開し、20年には免疫分野で日本初となる機能性表示食品として受理された。科学的根拠を持った商品として評価され、21年上半期の売り上げは前年同期比5割増を達成した。

 昨今の健康課題に取り組むため免疫の重要性に関する啓発活動や、国内外の免疫ケアの機会拡大・社会貢献を実施。グループ企業や外部パートナー企業と協働し、世界の健康課題の解決に挑み続けていく。

 

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