【1】テレワーク組と出社組がかみ合わない
吉田氏は「同じ社内でもテレワーク組と出社組との間で不公平感が広がっている」と指摘する。テレワーク組は比較的自由に時間配分できるがオフィス組には難しい。「データを持ち出せず、出社が必須の部門も1~2人など少人数ずつテレワークを経験させることが重要だ」と吉田氏は語る。
テレワーク組と出社組で認識がかみ合わないことは、オンライン会議で表面化しやすい。テレワーク組は社内の細かい動きが分からないため、会議の発言を遠慮しがちだ。例えば、ひとつの端末画面に社内の会議室に集まった出社組の3人が一緒に映り、圧迫感を感じたテレワーク組が意見を言いにくいといったこともあるようだ。
吉田氏は「ザイアンスの法則(単純接触効果)が働き、会議を催したリーダーも日常的に対面している人とのコミュニケーションを優先しがちだ」と話す。このため、①各自のパソコンで参加し1つの画面に1人とするなどオンライン会議のルールを決める②「アナタは会社にいないからよく分からないと思うけれど……」は禁句③議長は意識的にテレワーク組の意見を聞く――などの配慮が必要だと吉田氏は指摘する。
【2】オンライン会議が盛り上がらない
オンライン会議はリアルの会議に比べて意見が出にくく、仮に意見が出ても他のメンバーが無反応になりがちだ。このような場では新たなアイデアが生まれず、リーダーだけが話すことになる。吉田氏は1965年に提唱された心理学の「タックマンモデル」の活用を薦める。ひとつのチームが成果を出せるようになるまでには形成・混乱・統一などの段階を経るという。吉田氏は「リーダー自身がわざと稚拙な意見を述べて意識的に混乱に導き、反対意見を出しやすくするなど工夫したい」と助言する。
【3】仕事ができる部下の長時間労働
テレワークではサボる部下らの弊害よりも、真面目で仕事ができる部下の長時間労働が懸念される。午前0時を過ぎてもチャットで意見を交わし合うような状況では体調を崩しかねない。働き方改革が形骸化し部下が体調を崩すようになれば、現場のリーダーは管理能力を問われそうだ。
吉田氏は「長時間の仕事ができない仕組みを半ば強制的に作るべきだ」と訴える。具体的には、①21時以降はグループチャットを禁止し、緊急時はリーダー個人宛てにSNS(交流サイト)でメッセージを送る②朝礼は必ず参加。業務が入る時は朝礼前までにその日の活動予定を報告③深夜残業が生産性向上につながらないことを度々伝える――ことを吉田氏は勧める。