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DX迷子避けるデータ活用法 「プロにお任せ」は禁物 マクロミル 渋谷智之氏(上)

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 リスキリングが必須

 ビジネス実務のマネジャー層がDXで意識しておきたいのは、「経営の意思決定につなげるという『出口』だ」と、渋谷氏は説く。ビッグデータを読み解いて、有益な傾向・商機が得られても、それでおしまいではない。「経営の決定層にリポーティングして、意思決定を助けるのが本来の役目。課題解決をサポートするというゴールを見据えて、データサイエンティストと経営層を橋渡ししてほしい」(渋谷氏)

 実務マネジャー層が現実的なメリットを感じられないと、DXは見せかけだけのポーズになりやすい。ブームに乗っかった経営層から命じられたという「やらされ感」は形ばかりのDXを助長する。売り上げ増や作業効率アップなどの分かりやすいゴールを設定して、有益なデータ分析を要請するのは、「これからのチームリーダーに欠かせないスキル。過去の成功体験だけに基づいたマネジメントではチームの成果を引き出せない」と、渋谷氏はデータ活用のリスキリングを勧める。

 社内にありもののデータを使うだけでは不十分な場合もある。アンケート調査や聞き取り調査などを追加で実施して、「様々な種類のデータを重ね合わせることによって、もっと有益な分析結果が手に入る可能性がある」(渋谷氏)。こうした立体的なデータ活用を進めるにあたっても、どんな種類の調査手法があり、それぞれにどのような特徴や強みを持つのかを知っておくことがチームリーダーには望まれる。「役立つデータを探す、つくる」というスキルだ。

 新たなデータを得る際には、マクロミルのような専門会社に協力を仰ぐことが増える。ただ、発注者の立場になるチームリーダーには「実際にデータづくりを請け負う担当者との間で共通言語を使いこなす能力が期待される」(渋谷氏)。

 しかし、データ収集・分析に用いる専門的な知見までは不要で、「抱えている課題と、求めている解決策のイメージをきちんと言葉で伝えられれば十分」という。現場に潜む困り事や障害に日ごろから目配りすることが適切なイシュー(今の局面でケリをつけるべき問題)の切り出しにつながる。

 顧客層の輪郭を描き出すのは、主なデータ活用策の1つだが、渋谷氏は安直なペルソナ(顧客の人物像)づくりに注意を促す。「50代、男性、部長級」といった属性で切り出したペルソナはマーケティングの手がかりになる半面、「1人の顧客イメージを強調しすぎてしまい、戦略を誤らせるリスクを帯びる」という。

 年齢や職階などから導かれるペルソナ以外にも、消費の実態には利用時間帯や購入シーン、継続度など、様々な要素が絡み合っている。年齢や勤め先など、ユーザーの「外見」を重視した、ステレオタイプな顧客像づくりはかえって眠れるビジネスチャンスを見失わせてしまうおそれがある。

 こうした「平均値のわな」にとらわれないためには、いったん導かれたペルソナを、現場のまなざしで「検算」するような試みが欠かせない。「分析結果が『正解』なのではなく、あくまでも検討の材料。知見を持ち寄って実像に近づける作業がデータに命を吹き込む」(渋谷氏)

 DXの取り組みでは、顧客データのほかに、働き手の稼働状況や社内リソースの配分などにもデータを活用する動きが広がっている。そういった「内向き」のDXでも、「データに振り回されるようなデータドリブンは本末転倒。先に課題を洗い出すべき」と、渋谷氏は業務のリアルを重んじる。後編ではさらに具体的なDXやデータ活用の手順を紹介する。

渋谷智之(しぶや・ともゆき)
マクロミル データマネジメントプラットフォーム事業本部 コンサルタントグループ スペシャリスト。シンクタンクを経てインフォプラント(現マクロミル)入社。マーケティング課題のリサーチや分析などを手がけてきた。データ利活用支援事業では企業のデータ利活用の推進、人材育成支援などに取り組んでいる。

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