ヘルステックサミット2021特集

生涯にわたって健康を支えるドラッグストアへ スギ薬局代表 杉浦克典氏が語る

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

地域に根差すドラッグストアを運営するスギ薬局は、疾患予防から治療、介護・終末期に至るまで、健康状態に関わらず人の一生涯を支える「トータルヘルスケア戦略」を掲げ、様々な施策を打ち出している。少子高齢化に直面するわが国にとっても、疾病治療のみならず、予防や啓発までを含む包括的なコミットメントを通じた将来の医療費抑制は避けて通れない課題だ。スギ薬局はトータルヘルスケア戦略の先に、どんなビジョンを描いているか。同社の杉浦克典代表が「ヘルステックサミット2021」で行った講演の内容を紹介する。

 一生涯にわたり 健やかな暮らしを支える

 1976年に愛知県西尾市で2人の薬剤師が開いたのがスギ薬局の第1号店。以来45年にわたり、処方箋に対応できる調剤薬局機能も備えた「調剤併設型ドラッグストア」を全国各地で経営してきた。現在では、中部、関西、関東、北陸地方に約1,500の店舗を持つ。20年実績の売り上げは約6000億円、来店客数は延べ3億2千万人まで拡大をしてきた。

 薬剤師や管理栄養士等の有資格者が、顧客の状況に応じて健康増進に役立つアドバイスをするなど、当社は、人と人とのコミュニケーションを大事にしている。今後はそこにデジタルの力を掛け合わせたい。人と人とのコミュニケーションが生み出す価値や力をさらに高めるためにデジタルを活用することが、当社の推進しているDXの本旨だ。

 目指すのは、健康状態やライフステージに関わらず、どんな時でも頼りにしてもらえるドラッグストアである。病気の時の服薬や治療の支援はもちろん、健康な時の疾病予防や啓発、さらには介護・終末期の生活支援に至るまで、人の健康をトータルに支える「トータルヘルスケア戦略」に基づき、様々な施策を展開している。

 トータルヘルスケア戦略のポイントは3つある。1つ目は、様々な組織や企業との協業である。ドラッグストアのみで未病から終末期への対応がすべてできるわけではない。人の健康を包括的に支えるためには、他社との協業は必須であると考えている。2つ目は、デジタルデータネットワークの構築だ。各店舗が有するデータや、当社が日々の経営の中で得る様々なデータ、さらには、連携する企業や組織が保有するデータなどをつなぎ合わせたネットワークの構築は非常に重要だ。3つ目は、行政とのネットワークだ。当社は地域の健康増進施策の強化などのため、行政との包括協定を積極的に締結している。生涯にわたり人の健康を支えるサービスの実現は、少子高齢化がもたらす様々な課題に悩む行政の目指す方向性とも合致し、連携のメリットは極めて大きい。

 デジタル活用で顧客接点を拡大 トータルヘルスケア戦略を推進

 トータルヘルスケア戦略においては、データの活用も重要となる。

 当社が注力している取り組みの一つに、「健診結果の見える化」がある。自治体や勤め先等で健康診断を受けても、大きな疾患が見つかるなどしない限りは、健診結果をなんとなく見るだけという人が大半であり、せっかく健診を受けたのに、より健康になるための行動変容につなげられないのはもったいない。

 こうした課題意識から、店舗に健診結果を持参するだけで生活習慣病の罹患(りかん)リスクが分かる「生活習慣病リスクレポート」サービスを実施。対象者の健診データとビッグデータを掛け合わせることによって将来の生活習慣病罹患リスクや、同性・同年齢の各数値の100人中の順位等を統計的に算出する。レポートを踏まえて管理栄養士から直接説明が受けられるほか、健康アドバイスも受けることができる。

 健診結果を持参せずとも、店舗で血圧を測定するだけで生活習慣病リスクを見える化できる「ミニレポート」サービスも一部店舗で展開中だ。今後、段階的に対応店舗を増やしていく。

 また現在、「糖尿病予防応援プログラム」も順次拡大している。腕に貼る専用のパッチや日々の食事記録などを通じて一定期間の血糖値の推移を測定し、血糖値を水準以内にコントロールするためのアドバイスを管理栄養士から受けられるプログラムを開始している。

 これらの健康相談のデータや購買データ、調剤データなど社内データを紐(ひも)づけるだけでなく、他社様のデータを紐づけることでデータを活用したOne to Oneの接客へとつなげていくことを構想している

 ほかに、アプリを通じた疾患啓発や予防にも力を注いでいる。例えば、楽しみながらウオーキングができるように支援するアプリ「スギサポwalk」の質問やクイズを投げかけるミッション機能を使い、COPD(慢性閉塞性肺疾患)などの特定疾患の情報を提供している。チェックリストによるスクリーニングから受診勧奨・医療機関の検索機能への動線を作り、予防や早期受診勧奨へとつないでいき、その後一定期間をおいて受診行動の確認を行うということを、健康に関する豊富な知見を有する製薬メーカーとの協業によって実現へ向けて動いている。

 このようにデジタルの活用は店舗内外を問わず、また現在の健康状態を問わず、多くの顧客と接点を持つことを可能とする。このことはトータルヘルスケア戦略の実践において非常に重要であると同時に、わが国のヘルスケアを大きく革新する鍵ともなり得る。

 これまでは、病気になったら自ら病院を選択して受診する、あるいは薬局を選択して医薬品を購入するのが当たり前だった。そこで生じるやり取りはアナログが基本であった。しかしこれからは、デジタルで医療の専門知識を有する人材に健康相談を行い、医療機関等を受診することも可能となる。今後、導入が予定されるオンライン資格確認機能(マイナンバーカードや保険証によるオンライン上での保険証資格確認機能)は、医療機関や薬局での手続きを圧倒的にスムーズにするだろう。デジタルでコミュニケーションをとれれば、患者は必ずしも医療機関や薬局を訪れなくてもよくなる。薬剤の受取方法にも様々な選択肢が生じるはずである。

 これらは遠い将来の青写真ではなく、すぐそこまで来ている未来の予測だ。しかし実現のためには様々な企業や組織の連携が必須となる。当然、官民の垣根を越えた協働も必要だ。当社が掲げるトータルヘルスケア戦略もまた、我々だけで実現できるものではない。様々な強みを持つ企業や組織と力を合わせ、デジタルの活用によるヘルスケアの伸展に貢献したい。

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。