ヘルステックサミット2021特集

協業とDX推進で ヘルスケアサプライチェーン構築 アルフレッサの取り組みを同社事業開発室の石塚康規氏が語る

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ヘルスケア産業は、医療機関や医療者を含む多様なプレーヤーの参画によって成り立っている。医薬品や専門資材などの安全かつ正確な配送の実現もまた、誰もが安心してヘルスケアサービスを受けられる社会を構築するために欠かすことのできない要素の一つだ。医療用医薬品の卸売事業を手掛けるアルフレッサは、人手不足が深刻化する中、デジタル技術を活用した生産性向上施策や、ヘルスケア領域の物流の高度化に取り組んでいる。注力するのは、ヘルスケア領域の物流における未来の困りごとの解決だ。同社経営企画部事業開発室室長の石塚康規氏が「ヘルステックサミット2021」で行った講演の内容を紹介する。

 ヘルスケアの物流ニーズに応え 「地域サプライヤー」が活躍できる環境を整備

 当社は主に医療用医薬品の卸売事業を行う企業だ。現在、約1000社の製薬メーカーから商品を仕入れ、約23万の医療機関に商品や情報を提供している。東日本大震災時にはグループをあげて東北に医薬品を供給し続けるなど、有事の際に医薬品や資材を途切れず配送する計画も策定している。今回のパンデミックに際しても、消毒用アルコールを全国の医療機関や自治体に届けたほか、コロナワクチンや接種に必要な資材供給にも貢献した。

 今回のサミットのテーマは「Ahead to the Center~テクノロジーと共に『本質』を実現する~」だ。仕事の本質は、世の中の困りごとを解決することにある。医薬品の卸売りを手掛ける当社がやるべきはヘルスケア商品の流通において、未来に発生するであろう困りごとの解決だ。

 未来に発生する困りごととは何か。背景要因として重視すべきはリモートワークやECの普及など、ニューノーマルによる行動変容や価値観の変化だ。医療業界でもオンライン診療や服薬指導などが普及し始めている。また超高齢化社会の到来により、今後の医療や介護は「病院完結型」から、地域全体で病気を治し、支える「地域完結型」へと移行する。病院や施設のみならず、自宅で医療・介護サービスを受ける人も増加するだろう。

 これらを考慮すれば、今後、医薬品卸売企業は従来の主要顧客である医療機関や調剤薬局のみならず、地域包括ケアシステムの軸を担う行政や、さらには一人ひとりの国民にも目を配る必要が生じることが予測される。サプライチェーンの多様化も必須だ。それだけでなくサプライチェーン自体の高度化や効率化も成し遂げなければならない。

 しかしここには乗り越えるべきハードルがある。年々深刻化する労働力人口の不足だ。そこで当社は物流拠点から配送先までのラストワンマイルの配送に地域の労働力を活用し、サプライヤーの多様化を図る。地元の主婦や定年後のシニア人材、外国人人材などに「地域サプライヤー」として活躍してもらう。

 地域サプライヤーが活躍できる環境整備のポイントは、人材育成のための教育、人材や配送車などのリソースを需要に応じて調整できるシステム開発、医薬品の情報や届け先の位置情報などを含むデータの活用だ。

 テクノロジーを通じてこうした課題を解決することは、ヘルスケア領域における未来の流通エコシステム構築のためにも不可欠だ。

 AIやビッグデータなどを活用 ヘルスケアにおける未来の流通エコシステム構築

 当社は数年前から、他社との連携を通じて未来の流通エコシステム構築に資するシステムの開発や実装、トライアル実績を積み重ねてきた。

 連携先の一つが、わが国の物流業界のリーディングカンパニーであるヤマト運輸だ。19年より連携を開始し、21年8月には配送業務量予測と適正配車のシステムを共同開発。配送業務量予測システムではビッグデータやAIを活用して、配送先の医療機関ごと、あるいは時間帯ごとの物流需要を予測。配送の有無に加え、納品にかかる作業時間や荷物の量も予測。予測精度は90%以上の高精度だ。ここで導き出された予測に基づき、適正配車システムで必要な人員数や配送車の数、さらには最適な配送経路などを分析する。

 ヘルスケアの物流ニーズは曜日や配送先によって大きく変動するものの、需要予測自体が非常に難しいことから、従来は常に一定数の人員と配送車を確保していた。そのため生産性がばらつくことが課題であったが、当該システムの導入により大きな改善が見込める。

 地域サプライヤーが活躍できる環境を整備するには、知識や経験に関わらず、正確に業務を遂行できるよう支援する仕組みも必要だ。そこで2018年には、ナビゲーションシステムを提供するナビタイムジャパンと協働で医薬品配送支援ツール「saios(サイオス)」を開発。すでにアルフレッサのすべてのドライバーのスマートフォンに導入している。検品にも医薬品の専門知識が求められるなど、ヘルスケア商品の物流には一般的な物流とは異なる知識が必要であることから、雇用や人材育成が難しいという課題があった。しかし「saios」を活用すれば、知識がなくてもバーコードチェックで検品ができる。ほかに、リアルタイム交通情報を踏まえた配送経路のナビゲーションシステムも搭載。GPS機能により管理部門では全ドライバーの状況を確認でき、配送先からの追加の依頼や問い合わせにも迅速に対応できる。

 こうした需要予測システムや業務支援ツールをベースにしながら、ヘルスケア領域の新たな流通エコシステムの構築に向け、果敢に挑戦し続ける。将来的には、地域サプライヤーが患者の自宅や介護施設などへのラストワンマイルの配送を担うとともに、地域の見守りなどに参画できるようにもしたい。それぞれのサプライヤーが地域包括ケアシステムの中で、社会をよりよくする一員としての役割を果たすことを期待する。そうした取り組みの中で得たデータはプラットフォームに蓄積し、流通エコシステムのさらなる進化に活かしていく。

 今後も「すべての人に、いきいきとした生活を創造しお届けしたい」という理念をぶれることなく追求する。

 

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