アフターコロナの働き方

リモートワークはイノベーションにマイナスか? 同志社大学政策学部教授 太田 肇

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 「サードプレース」が果たす役割

 わが国では後者のリスクが大きいといえよう。したがってリモートのほうが周囲からの圧力を受けにくく、アイデアやイノベーションの芽が育ちやすいという面がある。会社で生まれたアイデアを自宅でじっくり考え直してみるとか、逆に在宅中に浮かんだアイデアを会社で他人に投げかけてみるといった使い方をすれば、リモートとリアルの「よいところ取り」ができるかもしれない。

 そしてもう一つ注目したいのが、最近日本でも増えているコワーキングスペースなど、いわゆる「サードプレース」である。会社の枠に縛られず、多様な情報や刺激が得られるところが魅力だといえる。

 一例を紹介しよう。福岡市に拠点を置くThe Companyでは、大企業や中小IT企業の社員、フリーランスなどが仕事場として利用するだけでなく、会員どうしがコラボレーションできるような場を設け、マッチングをサポートするスタッフも常駐させている。実際に人材の交流も進み、新たなビジネスが生まれるケースも多いという。大企業にとっては、いわゆるオープンイノベーションに近い役割も果たしているし、社員の副業解禁が進めば活動拠点としての価値はいっそう高まるに違いない。

 2 : 2 : 1 のハイブリッド型がベスト?

 おそらくこれからは、リモートと対面とをミックスさせた「ハイブリッド型」の働き方が主流になってくるだろう。そのベストミックスは?

 私自身の経験も踏まえていえば、かりに週5日働くとして、「2日出社、2日在宅、1日サードプレース」程度のバランスが、イノベーションを引き出すうえでも、またワークライフバランスや精神衛生を保つうえでもベストに近いのではなかろうか。

 ちなみに以前から働く場所が本人の裁量に委ねられている海外の企業でも、これくらいの比率で働く人が多い。また同じく海外のベンチャー企業のなかには、開発のステージに応じてリモートと出社を組み合わせているところもある。

 イノベーションは多様性のなかから生まれることを考えれば、仕事環境も意識的に多様化することが必要だろう。

太田肇(おおた・はじめ)
同志社大学政策学部・同大学院総合政策科学研究科教授。神戸大学大学院経営学研究科修了。経済学博士。専門は組織論、とくに「個人を生かす組織」について研究。日本労務学会常任理事。組織学会賞、経営科学文献賞、中小企業研究奨励賞本賞などを受賞。『「承認欲求」の呪縛』(新潮新書)、『「ネコ型」人間の時代』(平凡社新書)、『公務員革命』(ちくま新書)、『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)、『個人尊重の組織論』(中公新書)、『「超」働き方改革』(ちくま新書)など著書多数。近著に『同調圧力の正体』(PHP新書)

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