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ジョブ型導入、経営トップの覚悟と対話力が必要に 日本的ジョブ型雇用(下) パーソル総合研究所上席主任研究員・佐々木聡氏に聞く

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 日本企業では、KDDIや富士通などがジョブ型雇用制度を導入し、経営者や企業人事担当者から関心を集めている。これらの企業に共通するのは、経営トップが自らの言葉で自社の目指す方向と、その実現に向けた個人や組織のあり方を人事部と一体となって発信している点だ。日本のジョブ型雇用の現状に詳しい、パーソル総合研究所の佐々木聡上席主任研究員は「社内に浸透するカギは経営トップの姿勢。経営トップには自らの言葉で理解を促す姿勢が求められる」と指摘している。

 制度2割、運用が8割

 ――ジョブ型雇用は、単に導入するだけではなく、いかに運用していくのかが問われます。

 「いくら精緻で完成度の高い制度を作っても、制度のよしあしは2割で、残りの8割は実際の運用次第で期待する効果が変わってきます。我々の調査結果『ジョブ型人事制度に関する企業実態調査』によると、評価・処遇の納得感を高めるためには、目標設定・評価基準・処遇体系という3つの透明性が実現できなければ、制度が形骸化するという結果が出ています」

 「ジョブ型に転換しても、その目的に沿わない事例は少なくありません。例えば、部下が降格になることを恐れてポストを増産して責任の所在が曖昧になったり、職務記述書が詳細あるいは粗すぎて、運用が難しくなったりしたケースがあります」

 ――ジョブ型雇用では職務記述書のあり方が重要になってきます。企業はどのように取り扱えばよいのでしょうか。

 「職務記述書には、メンバーシップ型雇用では抽象的で曖昧だった個人の仕事や役割を明確にする利点があります。しかしながら、ジョブ型は『職務記述書ありき』では決してありませんし、職務記述書だけで組織が動くわけでもありません。職務記述書に関して重視すべきは、一度作成してもほったらかしにしないことです。日進月歩の技術革新によって、DX(デジタルトランスフォーメーション)関連の職種では、数カ月単位で職務記述書を書き換える必要が出てくる可能性があります」

 「我々の調査結果によると、ジョブ型雇用実施済み企業の54.9%は『ほとんどの職種』で職務記述書を作成済みですが、このうち3割近くの企業では定期的な更新ができていません。これから市場価値の高い人材を獲得していくためには、職務記述書の整備を進めるほか、少なくとも1年に1回のメンテナンスが必要でしょう」

 「興味深いのは、職務記述書の書き換え頻度の多い企業は、対象職務の報酬について、市場相場を勘案しながら決定している傾向があることです。もし市場相場の数字とかけ離れた報酬を設定していると、優秀な人材が集まらなくなる懸念があるからです」

 カゴメ、「外から、上から」導入

 ――ジョブ型雇用になじむ業種は何ですか。

 「業界ごとに、『なじむ』『なじまない』と切り分けることは難しいですが、経理や法務、DX関連といった職種別で分類することは可能です。ジョブ型雇用に適する高度な職種は様々あり、職務レベルに応じて支払う報酬が異なります。また階層別でとらえると、組織に与える影響度や難易度の高い業務に関わっている管理職は、ジョブ型雇用の適用になじみます。例えば、ブリヂストンでは、管理職はジョブ型、非管理職はメンバーシップ型というハイブリッド式の制度を採用しています。そのほか、海外売上比率の高いグローバル企業では、海外子会社にジョブ型雇用を導入することは必然となっています。海外子会社の地元採用の社員に対して、日本以外には導入されていないメンバーシップ型雇用を持ち込んでも理解を促すのは至難の業だからです」

 ――日本企業では、カゴメがジョブ型雇用の導入と運用で成功を収めています。成功の要因はどこにあるとみていますか。

 「カゴメの制度で最も評価すべきは、運用における制度の透明性と、職務等級に合った評価と報酬体系で透明性があり、社員に納得感がある点です。制度導入の観点では、まず海外子会社から導入し、その後、日本では段階的に取締役から執行役員、部長職、課長職へと導入していきました。『外から、上から』変えていったのが、カゴメの特徴です」

 

 

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