競争しない競争戦略

カーブス・QBハウス 競合に「カニバリ懸念」引き起こす 早稲田大学ビジネススクール教授 山田英夫

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 価格競争による不毛な消耗戦など企業間の厳しい競争に打ち勝ち、大きな利益を上げるためには「競争しない」状況をつくることが重要だと早稲田大学ビジネススクールの山田英夫教授はいいます。それを実現するためには「ニッチ」「不協和」「協調」の3つの戦略があります。ニッチ戦略はリーダー企業との競合を避け、特定市場に資源を集中する戦略。不協和戦略はリーダー企業の経営資源や戦略にジレンマを起こさせる戦略。協調戦略はより強い企業と共生し、攻撃されない状況を作り出す戦略です。この連載では、山田教授の著書『競争しない競争戦略 改訂版 環境激変下で生き残る3つの選択』(日本経済新聞出版)のなかから、戦略別に企業などのケーススタディをとり上げ、「競争しない」状況どう作り出すかを明らかにします。第5回は不協和戦略の「事業の共喰化」型のなかから、簡易型フィットネス・ジムの「カーブス」とヘアカット専門店「QBハウス」のケーススタディを紹介します。

 

 不協和戦略

 ■事業の共喰化

 事業の共喰化は、リーダーが強みとしてきた製品・サービスと共喰い(カニバリゼーション)関係にあるような製品・サービスを出すことによって、リーダー企業内に追随すべきか否かの不協和を引き起こす戦略である。

 ▼カーブス

 プールや風呂などの設備を持たない簡易型フィットネス・ジムが増えている。米国生まれのカーブスは、2005年に日本に上陸した。

 カーブスは、女性を対象に、12 台のトレーニング・マシンを円形に配置し、30 分ワンセットでトレーニングが終わる。会員の多くが毎日のように通ってくる。気軽に通ってもらうため住宅街に立地し、水周りの施設がいらないことから、雑居ビルや商店街のテナント跡地などにも出店している。そして、フランチャイズ展開によって店舗を増やしている。こうしたローコスト運営により、月会費も大手の半額強に抑えている。

 カーブスのインストラクターは、会員の顔と名前をすべて覚え、来館すると下の名前で会員を呼び、しばらく来ないと電話で様子をうかがう。カーブスは主婦会員が大半のため、家計意識が強く、きちんと通えない場合には退会してしまう傾向が強いからである。

 カーブスの会員数は、2012年には業界首位のコナミスポーツに次ぐ2位にまで成長したが、大手のスポーツ・クラブは簡易型フィットネス・ジムになかなか同質化をしかけることができない。

 従来型クラブを簡易型に転換すれば、月会費が下がり、売上の減少を招いてしまう。また、プールや浴室などに投じた費用が回収できなくなってしまう。さらに、大手のスポーツ・クラブは、「高い会費を払いながらもあまり通わない会員」によって経営が支えられていた面があったが、カーブスのように高頻度に通うようになると、ジムが混雑してしまい、既存会員の顧客満足度が下がる可能性があるからである。

 一方で、トレーニング・マシンだけを置き、最小限のスタッフで長時間営業している「エニタイムフィットネス」「JOYFIT24」などが登場している。しかし彼らは、主婦をターゲットとするカーブスとは異なるため、市場の喰い合いにはなっていない。

 

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