競争しない競争戦略

ワークマン・スタサプ なぜ他社は追随しないのか? 早稲田大学ビジネススクール教授 山田英夫

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 ▼ワークマン

 ワークマンは、工事現場などで働くプロの作業者向けに、仕事着や手袋などを販売する小売りチェーンとして誕生した。ターゲットを作業者に絞り、そのために必要な防風、防水、防寒などの機能に優れた商品を提供してきた。モデルチェンジせず、最低でも数年間は継続販売することから、大量調達による原価低減を可能にした。

 ワークマンは、商品を廃番にするときと、端サイズの処分時以外には値引き販売せず、そのため高い利益率を確保していた。

 その機能の高さが、プロ作業者ではない一般の消費者にも評価され、ワークマンはアウトドアウェアとして購入されるようになってきた。そうしたニーズに応えるためワークマンは、事業ドメインを「作業服」から「機能性ウェア」に転換した。

 そのためにワークマンは、プロ顧客と一般消費者の両方にアピールできる「ワークマンプラス」という店舗を新設し、対応している。ここでは、機能性が高いウェアを安い価格で提供しており、プロ作業者だけではなく、従来ならワークマンに近寄ることもなかった女性客も急増し、ファミリー層にも拡大している。

 一般のアウトドア・ファッション企業は、シーズン前に新製品を投入し、型落ち商品は値引きで在庫を一掃することを常としてきた。新製品が市場を刺激し、流通もそれを求めていたのである。

 流行が激しいファッション業界にあって、ワークマンは機能と価格を両立させ(*1)、かつモデルチェンジしないことの価値もアピールし、大手ファッション企業に追随されない強さを誇っている。

 ブランド名が知られてくると、高付加価値商品を出して商品単価を上げるのがアパレル業界の常識だったが、ワークマンでは、「ワークマンの神髄は低価格だから、付加価値商品を前面に出すことはしません(*2)」と語っており、従来のアパレル企業とは一線を画している。

 (*1)ワークマンはポーター賞を2019年度に受賞。同賞は、機能と価格というように一見トレードオフの要素を両立した企業に授与されるケースが多い。他にも、トラスコ中山、星野リゾート、スター・マイカ、カイハラ、ガリバー(現:IDOM)などが受賞している。

 (*2)「ワークマンプラスの仕掛け人 土屋専務のリーダー論 アメを先に渡せば責任を果たしてくれる」『日経トレンディ』2020年8月号

山田英夫著『競争しない競争戦略 改訂版 環境激変下で生き残る3つの選択』(日本経済新聞出版、2021年)、「第3章 不協和戦略―資源不適合を引き起こす」から抜粋。

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