競争しない競争戦略

セコマ・崎陽軒 地域限定徹底し大手に勝つ 早稲田大学ビジネススクール教授 山田英夫

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 価格競争による不毛な消耗戦など企業間の厳しい競争に打ち勝ち、大きな利益を上げるためには「競争しない」状況をつくることが重要だと早稲田大学ビジネススクールの山田英夫教授はいいます。それを実現するためには「ニッチ」「不協和」「協調」の3つの戦略があります。ニッチ戦略はリーダー企業との競合を避け、特定市場に資源を集中する戦略。不協和戦略はリーダー企業の経営資源や戦略にジレンマを起こさせる戦略。協調戦略はより強い企業と共生し、攻撃されない状況を作り出す戦略です。この連載では、山田教授の著書『競争しない競争戦略 改訂版 環境激変下で生き残る3つの選択』(日本経済新聞出版)のなかから、戦略別に企業などのケーススタディをとり上げ、「競争しない」状況どう作り出すかを明らかにします。第2回は「空間」から考えるニッチ戦略をとる、セイコーマート、ヤマサちくわ、崎陽軒のケーススタディを紹介します。

 

 ニッチ戦略

 ■空間ニッチ

 空間ニッチとは、限られたエリアだけを事業領域として資源集中することで、その地域に関しては大手企業であっても、シェアを取れない状況にしてしまう戦略である。

 ▼ セイコーマート

 セイコーマート(親会社の名称はセコマ)は1971年に酒販店から業態転換し、日本初のコンビニ1号店を開店した。1974年にコンビニ運営会社「セイコーマート」を設立し、町の酒屋さんをチェーン化して業態転換させてきた。

 同社は北海道に特化したコンビニである(他に茨城県と埼玉県にも出店しているが、これらは、苦しくなった他社を買収したものである)。北海道における同社の店舗数は2021年2 月末で1170店、人口カバー率は99.8%、道内シェアは大手コンビニを抑えて36.1% (2020年3月末)とトップである。

 同社の特徴は、第1に他のコンビニと違い直営店が多く、第2に24時間営業を基本としていない点も大手コンビニと異なっている。第3に自社ブランドの食品工場を持ち、製販一体の体制をとっている。そして第4に、店内で調理するホットシェフという形態にも力を入れている。これはオーダーを受けてからカツ丼や豚丼を作る形態で、町の食堂の役割も果たしている。これは、地域の食堂が少なくなった北海道の地域特性から出てきたニーズである。

 セイコーマートは、リーダー企業のセブンーイレブンに比べて、北海道内に高密度の店舗、物流ネットワークを持っており、簡単にはリーダーに追随されにくい仕組みになっている。また、製販一体の体制やホットシェフなども、セブンーイレブンは追随できていない。ホットシェフは手間がかかるため、フランチャイズ加盟店からは反発が多い。それゆえに、セイコーマートは直営化を進めている面もある。

 一方で、北海道の面積が倍にならない限り、セイコーマートの売上が増え続けることは難しい。そのためセイコーマートは、出店は道内にとどめながらも、海外から直輸入したワインを、首都圏のスーパー、コンビニ、ホテルなどでも販売している。これは、同社が酒屋さんから発展してきた強みを活かしたものである。また、自社で生産したアイスクリームなどを関東のコンビニなどに卸している。

 2015年春には、東京に物流拠点を置き、関東圏のイオングループなどに自社開発商品の販売を始めた。こうして北海道に軸足を置きながらも、見えないところでエリア外への外販も強化しつつある。

 ▼ ヤマサちくわ

 豊橋のちくわ・かまぼこメーカーのヤマサちくわは、1827年に創業され、現社長は「比叡山と箱根の山を越えて直営店を持たないこと」を標榜している。日本で有名なかまぼこと言えば、他に小田原、仙台などが挙げられるが、彼らの多くは全国展開を行っている。それではなぜ、ヤマサちくわはエリアを限定しているのだろうか。

 1つには、企業規模が小田原のかまぼこメーカー、鈴廣ほど大きくないことから、経営資源を特定のエリアに集中する必要が挙げられる。ちなみに鈴廣の売上102億円(2019年8月期)に対して、ヤマサちくわの売上は41億円(2019年3月期)である。

 実はもう1つ隠れた狙いがあり、同社はエリア外で店舗を展開していないからこそ、豊橋を訪れた人のおみやげ品になっている。おみやげ品は「そこでしか買えないこと」が価値を高める。また、おみやげ品は日常の財布ではなく、ハレの財布から支出されるため、定価でも売れ、利益率が良くなるのである。

 

 

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