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増えるカスハラ・在宅時の不満…怒りとどう向き合うか? 戸田久実・日本アンガーマネジメント協会理事に聞く

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 ③ テレワーク中の自分への怒りの対処法

 新型コロナウイルスの感染拡大で普及したテレワーク。一方で「休憩時間にダラダラしている自分が許せない」と自己嫌悪に陥るケースなどが目立ってきている。戸田氏は「生真面目なタイプほど、ラフな格好で自宅のソファに横になることや休憩中にテレビを見ることでダメな人間になっていると思い込むようだ」と指摘する。ただ人間の脳が集中力を発揮できるのは朝日を浴びて起床してから13時間以内で、15時間を過ぎると酒酔い運転と同レベルの集中力しか保てないという研究結果もあるという。「適切な休息は生産性の向上に必要不可欠だ。このタイプは何ができたかに目を向けるようにすべきだ」と戸田氏。「この時間内にこれができた」「通勤時間がない分資料整理が進んだ」――などだ。

 「直したい習慣があるのに変えられない」という自分に対する不満も、テレワーク中には内向きに増幅してくる。「アンガーマネジメントには『ブレイクパターン』という、柔軟に変化に対応しやすくなるトレーニングがある」と戸田氏。まずは毎朝必ず見るテレビ番組を変えてみる、コーヒーから紅茶・日本茶にするなど無意識にしていることを意識的に変えることに取り組み、新しい習慣に変えられるということを自分になじませることが第1ステップという。次のステップは「長年染み付いた習慣は、300回トライする気持ちで気長に取り組むこと」。テレビ局のアナウンサーを指導する講師からそう指導されたという。戸田氏自身「イントネーションを修正するときに実践した。1日3回注意すれば3カ月後には新たな習慣が身につく」という。

 ④ 「6秒ルール」が難しい場合には

 怒りを感じたときの「6秒ルール」はアンガーマネジメントの基本中の基本。怒りに任せた衝動的な行動をするのではなく、心の中で6秒数える。怒りが生まれてから理性が働き始めるまでの時間が6秒だ。ただ6秒やり過ごすのが難しい時は「意識を違うところに向けたり、その場を離れること」を戸田氏は勧めている。ペンを観察し、インクの減り具合や書いてある文字を確認したり、スマホの画面でお気に入りの写真を見たり、トイレに席を立つ、コーヒーをいれにいく――などだ。テレビ会議中でも端末画面から一瞬消えてもよい。

 青色発光ダイオード(LED)を発明した中村修二氏は、かつてノーベル物理学賞を受賞したインタビューで「私の原動力は怒りだった」と答えた。「なぜ あの人はこんなことをする」「どうしてこんな制度がある」と自分の力でどうにもならないことや過去のことにとらわれて、イライラしても不毛な怒りが募るだけだ。自分の力でコントロールできないことだと見極めたら、これ以上の怒りは抱えないことがポイント。長期的な目線でとらえることで、建設的な行動に向けての選択ができると戸田氏は強調する。 強いエネルギーを持つ怒りを、創造的な行動を起こすモチベーションとしても使うこともできる。戸田氏は「アンガーマネジメントを身につければ、個人のパフォーマンスアップ、そして組織の生産性向上にもつながる」と話している。

 (松本治人)

 

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