日経SDGsフォーラム

ウィズコロナ時代の製薬とは SDGs推進、今こそ好機

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振り返るとこの2年、製薬企業ほど社会から期待された産業は他にない。新型コロナウイルスの治療薬やワクチンで、残念ながら日本勢は後じんを拝した。が、「ウィズコロナ時代」はまだ続く。SDGs(持続可能な開発目標)を前に進めていく好機といえる。

 国産ワクチン 世界にどう貢献

 世界は未知のウイルスに振り回された。今なおパンデミック(世界的大流行)終息の行方が見通せないなか、それでも社会が落ち着きを取り戻すことができたのは、最新のテクノロジーを使った医薬品が短期間でいくつも登場したからだ。

 ワクチンの供給を巡っては世界保健機関(WHO)が再三にわたり「分配の公平性」を求めたが、うまくいかなかった。米国をはじめとする先進国が自国主義に走り、余るほどの「買い占め」をした。製薬企業も収益性を無視するわけにいかず対応した。新たな「南北問題」を生みだした。

 世界の健康を追求する。国際社会が協調して感染症に立ち向かうグローバルヘルスの考えは、ほころびが目立った。

 SDGsが掲げる「すべての人に健康と福祉を」。聞き心地のいいフレーズだが、資本主義の世界で競う製薬企業にとって達成するのは一筋縄でいかない。医療の世界ではとかく相いれない「収益性」と「公益性」。このジレンマにどうしても陥ってしまうからだ。

 第一三共は今、医薬品に革新をもたらすと注目される「メッセンジャーRNA(mRNA)」による新型コロナワクチンの実用化を目指している。国産ワクチンへの社会の期待は大きい。是非、実現してもらいたい。その際には、世界の健康にどう貢献していくかという視座をもって事業展開する工夫も必要になるだろう。

 得意とするがん領域においても、副作用なく腫瘍を消失する画期的な薬が実現すれば、それで目的が達成できたとする時代でもない。抗体や核酸、遺伝子といった昨今のバイオテクノロジーを駆使した医薬品には、どうしても高額化問題がつきまとう。患者にとって福音となるはずの画期的な新薬が、命を救うという行為に格差を生むことにもなりかねない。

 真鍋淳社長は「2030年ごろになると医療の姿が変わるだろう」とみている。再生医療や遺伝子診断といった新しい治療・検査法に加え、人工知能(AI)やデジタルトランスフォーメーション(DX)も医療現場に浸透する。医薬品に代わる「治療ソリューション」の提供こそが肝要になる。

 第一三共の強みという「サイエンス&テクノロジー」に加え、柔軟なアイデア、斬新な発想を取り入れることだろう。SDGsを経営戦略の柱にすえ、新たな時代の医療を支える新しい製薬企業に踏み出してもらいたい。

 (編集委員 矢野寿彦)

「サイエンス&テクノロジー」で価値生み出す――――
 コロナ禍でまず、「人々が健康でないと、日本、世界のサステナブル(持続可能)な発展はない」と痛感しました。残念ながら、日本の製薬企業にとって感染症という領域はリサーチフォーカスから外れていた。事業性もさることながらパンデミック(世界的大流行)への危機感を欠いていたのでしょう。
 企業が地球環境問題やコロナ対応に真剣に取り組むには、短期的な業績だけでなく、長期的な価値創造が必要です。営業利益や売上高以外の価値、非財務的な価値を生み出したいと思っています。
 2021年4月からの5年間にわたる第5期中期経営計画で、短期だけでなく中長期的なESG(環境・社会・企業統治)経営で非財務的な価値を創る方針を掲げています。「革新的な医薬品の創出」「医療アクセスの拡大」「環境経営の推進」など、持続的な成長に向けて取り組むべき重要課題(マテリアリティー)を8つ特定しました。
 どれも、会社として、そして社会として大切であると考えます。これらの課題を乗り越えるべく、着実に実行に移していければ、おのずと価値が生まれていきます。
 第一三共としての強みは何か。それをどう生かすか。何よりも「サイエンス&テクノロジー」だと考えます。例えば、狙ったがん細胞だけに特異的に送り込む抗体薬物複合体(ADC)があります。このユニークな技術を、がん領域で水平展開していきます。
 (十分な治療が施されていない)アンメット領域である、がん、並びにアルツハイマーを含めた中枢性疾患に対し、治療ソリューションを提供する。患者さんに対する医療貢献を通じて、SDGs(持続可能な開発目標)の3番目「すべての人に健康と福祉を」にダイレクトに結びつくでしょう。

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