日経SDGsフォーラム

ライブの感動 新たな生きがいに 瞬時に世界へ スマホは「どこでもドア」

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手のひらにすっぽり収まるスマートフォン。何もせずに黒い長方形のガラスの画面に向き合うと自分の顔がうっすらと映るだけの代物だが、やさしく指でポンと触れると、誰もが世界と瞬時につながるドラえもんの「どこでもドア」のような存在へと変わる。スマホがなければ絶対に体験できないことが、スマホがあれば誰でも簡単にそんな世界へといざなってくれる。共感を呼ぶライブ感は、より良き社会の実現へのムーブメントにもなる。

 世代や地域越え 広がる共感の輪

 「気持ちは永遠の20歳、皆さんと仲良く、楽しい配信を心がけてます」

 インターネットのライブ配信、17LIVEのサイトにこんなプロフィルを掲げている女性がいる。名前は「せんちゃん」。74歳。彼女には160万もの「いいね」が寄せられている。「せんちゃん」がライブ配信を始めたのは70歳、2018年のことだ。引っ込み思案で家から出ようとしなかった「せんちゃん」を心配した娘からスマホを手渡され、「ライブ配信してみたら」と勧められた。

 スマホ初心者の「せんちゃん」。戸惑いながらも娘の助けを借りてライブ配信を始めるとアクセスしに来た孫のような若者と何の変哲も無い世間話を交わしたという。言葉のニュアンスが若者と違うこともあるが次第に時間を共有できるライブ配信の魅力に取りつかれ、人生相談に乗ったり、勇気を出してギャルメイク配信をしたりしていくうちに人気に火が付いた。「面白いおばあちゃんがいる」と。今ではフォロワー1800人もいて、幾ばくかの報酬も得ているれっきとしたライバー(ライブ配信者)だ。家族などからは「若返ったね」と言われて「せんちゃん」も満足げだ。

 インターネットというインフラがあってこそ、つながる世界。「せんちゃん」の活動を支えるライブ配信はSDGsの3番「すべての人に健康と福祉を」、8番「働きがいも経済成長も」へとおのずと結びつく。

 9月26日正午、17LIVEでは「SDGsは、たのしくはじめたっていい。」のライブ配信がスタートした。メインMCの関根勤さんは「せんちゃん」を引き合いに出して「地球の将来や子どものこととか、ライブでいろいろと相談できるし、電子の発達がこういう形でいきていることがわかる」と舌を巻いた。

 17LIVEのライバーには北海道が拠点のシンガーソングライターもいる。スマホ越しに歌い続けているうちに全国にファンができた。地方にはどうしてもハンディがあったが、テクノロジーによって制約が取り払われる。

 社名にある「17」は偶然にもSDGsが掲げる17の項目と一致する。テクノロジーがどこまでSDGsの17に落とし込めるのか。感情の共有ができるライブの未来にかかっている。

 (編集委員 田中陽)

互いの「近さ」強み、感情の共有がパワーに――
 今から20年少し前、NTTドコモのインターネットサービス「iモード」を手にした時、自分の体が革命的な感覚に襲われたのを今でも鮮明に覚えています。「何かとつながる」「誰でも発信できる」「どこでも使える」。
 それまでは生物学者になろうと人の体の仕組みの解明に取り組んでいましたが、iモードなどのデジタルイノベーションと出会い、逆に自らが人や社会のために新たな仕組み作りに携わるべきなのでは思い、身を転じることにしました。いくつかのネット企業に関わっていくなかで経営者として飛び込んだのが今のライブ配信の世界です。
 ホモサピエンス(人類)はコミュニケーションが必須の生き物です。その提供の機会を作ることは本質的なもので、自然と持続可能な取り組みになりますね。とくにライブはライバーと視聴者との距離が短く、その分、感情の高まりが大きくなります。私たちは「感情のプラットフォーム」を創り、結果として新たな価値創造に結びつくモノがあればいいと思っています。
 実はSDGsを意識したことはありませんでしたが、喜びをつなげられたり、互いに幸せになったり、チャンスがなかった人にチャンスができる場を提供したりすることがSDGsの考えに当てはまることに気がつきました。1人の人間の生き方が変わることだってあります。
 もはやネットの世界では自分の一生の時間を消費しても見られないコンテンツにあふれています。スポーツ、音楽をはじめ「今しかない」という瞬間の連続こそが新たな感動や感情を生み続けるライブテクノロジーは経済的価値だけでなく、社会的価値を提供し続けるはずです。

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