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EV化 ルール作りで日本勢に乗り遅れ懸念 深尾三四郎・伊藤忠総研上席主任研究員に聞く(上)

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 脱炭素化時代へのロードマップ作成を巡り、国際的な主導権争いが激化している。主戦場のひとつが自動車業界だ。第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)ではガソリンを使う自動車の新車販売を主要市場で2035年、世界で40年までに終えるとする英国の宣言に欧州・南米が中心の23カ国と、11自動車メーカーが賛同した。「モビリティ・ゼロ 脱炭素時代の自動車ビジネス」(日経BP)の著者である伊藤忠総研の深尾三四郎・上席主任研究員は「日本の自動車業界は現在進行中のルール作りに参加できていない。欧州に外堀が埋められつつある」と警鐘を鳴らしている。

 ――COP26は会期延長の末に欧米がインドなどに譲歩し、石炭火力の利用に関する合意文書の表現を弱めることで決着しました。   

 「中国とインドの存在感が増す一方、日本の先行きへの危機感が強まりました。脱炭素は目に見えないCO2の削減努力をお金に変えるという、欧州が編み出した新たな経済ルールです。既成概念を破り、リセットボタンを押して新しい土俵をつくる一種の創造的破壊です。狙いは地球温暖化を防ぐ理想の下に、企業にイノベーションを促し雇用を創出させる一種の『経済戦争』です。海外の政策決定者は、COP26は通貨と雇用の獲得競争と位置付けていました。日本の主張を国際世論に訴え、認めさせないと不利な立場に追い込まれます。一番そのシナリオの実現性が高い産業は自動車です」

 「脱炭素への対応は、まずルールづくりへの参画が先にあって、モノづくりはその後に取り組むべきなのに日本では順序が逆になっているように見えます。COP26に日本車メーカーの最高経営責任者(CEO)は一人も姿を見せませんでした。ルールメーキングで不戦敗した形です」

 土俵に立っていない日本と日本車メーカー

 ――ただ40年までにガソリン新車の販売を終えるという有志連合の「2040 ICE Ban」宣言には、日米中印独の各国が加わっておらず、この宣言がグローバルスタンダードになるかは未知数です。

 「自動車メーカーでは米GM、米フォード、スウェーデンのボルボ・カーズ(中国・吉利グループ)、独メルセデス・ベンツ(ブランド所有者・ダイムラーの筆頭株主が吉利トップ)、中国BYD、英ジャガー・ランドローバー(印タタ・モーターズ傘下)が参画しており、米中英印連合による宣言にもみえます。自動車における脱炭素化で主導権を握ろうとするEUに対し、米中英印勢でなんとか対抗する姿勢をみせたことに、現時点でその土俵に立っていない日本と日本車メーカーは脅威と感じるべきです」

 「中印が電気自動車(EV)化を急いでいるのは、ハイブリッド車(HV)やエンジンに強みを持つ日本を超えて、ルールメーキングで欧米に追いつき追い越そうとしているからです。さらに運輸部門・物流での商用車と中古車におけるEV化が一気に加速する可能性が高くなっています」

 

 

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