どこでもオフィスの時代

「副業解禁」が切り開く新たな世界 個性誇る時代に テレワークと承認欲求(下) 同志社大学政策学部教授 太田 肇

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 日本人にとって、会社や職場で周囲から認められることは、モチベーションや働きがいの根幹にかかわるほど重要だ。ところが新型コロナウイルス禍によってテレワークが一気に広がり、これまでのような形で認められ、承認欲求を満たすことができなくなった。上司の目前に部下はいないし、部下は自分の存在や働きぶりを認めてくれる上司や同僚が周りにいない。しかもテレワークへの移行は長期的にみてもおそらく不可逆的な変化である。

 企業は社員のやる気を引き出すため、社員は自分自身のモチベーションを高めるために、新たな形で承認欲求を満たすことが必要になる。いわばテレワークモードへの切り替えでポイントとなるのは「共同体から開かれた世界へ」「上下関係から対等な関係へ」の変化である。社内で「偉さ」を誇るのではなく、フラットな関係のなかで能力や業績、個性が認められる時代なのである。

 これまで以上に認められるチャンス

 冷静に考えればテレワーク時代の到来は、一人ひとりが活躍し、これまで以上に認められるチャンスだということがわかる。

 拙著「日本人の承認欲求 テレワークがさらした深層」(新潮新書)で詳しく書いているが、テレワークを活用することで、自分の能力や個性、成果を認められる機会が大きく広がる。いわば承認の「床」と「天井」が高くなり、「壁」が取り払われるわけである。

 まず「床」について説明する。テレワークでは一人ひとりの顔や仕事ぶりが外から見えやすい。これまで上司や先輩の陰に隠れて目立たなかった人が、テレワークになった途端に組織の内外に存在感を示すようになったケースがある。

 次に「天井」について。テレワークの導入と並行してジョブ型雇用に切り替えたり、成果重視の評価制度を取り入れたりする企業が少なくない。その結果、実力次第で抜てきされ、高い地位に就けるようになる。

 そして「壁」だが、これまで普通のサラリーマンが認められる場は部署内か社内、あるいはせいぜい顧客や取引先との関係くらいだった。ところがテレワークは物理的に会社の壁を越えるだけでなく、社外、それも世界中の人と容易にコミュニケーションがとれるようになる。その結果、会社の外で能力や業績を認められるチャンスが生まれる。いわば「世間」が広がるのだ。テレワークをきっかけに転職や独立にいたるケースも増えている。

 

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