日経SDGsフォーラム

商業施設の満足、女性のセンスで 街づくりが育む多様性

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日本社会においてダイバーシティ(多様性)はSDGs(持続可能な開発目標)の中でもハードルが高い。同質性を求める伝統的な価値観や慣習が根強く、意識改革に時間がかかるためだ。街づくりを通じて社会基盤の形成を担う不動産業界がジェンダー平等を進めれば、日本社会に多様性の素地を育み、イノベーションの機会や持続可能性を高めよう。

 SDGsの難関 ジェンダー平等に挑む不動産業界

 三井不動産は2021年、ダイバーシティ&インクルージョン推進宣言をまとめた。女性活躍の推進を重要な経営方針と位置づけ、女性管理職の比率を21年の5.7%から30年に20%に引き上げる方針を打ち出した。グループとしても、育児休業復帰率を100%にするなどの定量目標を掲げている。

 不動産の世界は、土地の取引交渉の難しさなどから女性に向かない職場と思われてきた。このため男女雇用機会均等法の施行後も女性の採用は少なく、足元での女性管理職は少ない。しかし、価値観が多様化した今、不動産業は女性に振り向いてもらえなければ立ちゆかない時代を迎えている。

 とりわけ女性のセンスがモノを言うのが商業施設だ。三井不動産は「ママwithららぽーと」と題し、買い物に行くのにどのようなショッピングセンターが望ましいか、子育て中の女性が議論し、それを施設づくりに生かした。

 例えば、通路の幅はベビーカー同士がすれ違える広さにし、通路の勾配もうっかりベビーカーから手を離しても動いていかない傾きにした。授乳室は母親が1人で黙々とあげるのではなく、ママ友とおしゃべりをしながら授乳できるスペースにした。

 極め付きはトイレだ。同じ地域に似たようなショッピングセンターがあった場合、どちらを選ぶか。女性の判断基準で最も大きいのはトイレだという。一緒に入った子どもが先に出て行ってしまうことがないよう、子どもの手の届かない高さにカギをもう一つつけた。内装も男性の視点だと「さすがにそこまでやらなくても」というほどにこだわった。女性は自分たちが何を基準に店を選ぶか分かっているので、そこは譲れない。

 こうした女性の活躍を進めるため、活動計画も定めた。①性別にかかわらず多様なライフスタイルを尊重し長く働ける環境づくり②組織の意識改革と女性の意欲向上やキャリア形成の支援――を柱に研修や各種制度の充実を進めている。

 三井不動産はジェンダー平等に優れた企業でつくる株価指数「MSCI日本株女性活躍指数」の銘柄に4年連続で選ばれた。こうした指標をどう企業価値に結びつけていくか、マーケットの評価の方法が確立されていけば、ダイバーシティを後押しすることになるだろう。

 (編集委員 斉藤徹弥)

子育てをしながら働き続けられる社会へ

成熟化社会になり、お客様のニーズが多様化すると、サービスを供給する側も価値観が多様化していかなければお客様に満足してもらえなくなりました。同質な集団は世の中の変化に気付けず、イノベーションも起きません。ダイバーシティは、よりよい街づくりをするために、社内を多様化しなければならないという発想から始めました。
 
お客様に満足いただける街づくりに不動産業の知見だけでは不十分です。健康な暮らし、地球に優しい生活、スポーツ、エンターテインメントなどで、各業界の知恵を借りなければいけません。中途採用も積極的に行い、様々なキャリアを重ねて不動産会社にない知見と経験を身につけた人にも入ってもらっています。

ダイバーシティも幅広いですが、まずは女性活躍推進です。2000年代に不動産業のお客様は7割以上が女性だと気付きました。女性の視点でものを作り込むと景色が変わり、ショッピングセンターの化粧室は今、高級ホテル並みです。

女性に活躍してもらうには、時間の制約がある従業員が引け目を感じずに能力を発揮できる環境にすることが大切です。そのためには男性社員をはじめ周囲の環境が重要で、様々な研修に力を入れています。男性も女性も育休取得率100%を目指します。

私が若いころはほとんど家事をした経験はなかったのですが、その反省も込め、研修には必ず私が出て「男性が育児や家事を当たり前にする文化をつくらなければならない」と繰り返しています。

日本の少子化に歯止めをかけるには、子育てをしながら働き続けられる社会が大事です。その先駆けになるためにもダイバーシティに取り組んでいきます。

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