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あなたの職場トイレは安全ですか? 増加するリスク 職場トイレのリスク管理  健康企業代表・医師 亀田高志

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 慰謝料を認めた判例も

 職場でののぞき見や盗撮行為は上司と部下、あるいは同僚の間のセクシュアル・ハラスメントにも該当します。

 現実の裁判例もあります。職場内の女性トイレに男性社員が侵入して盗撮を行っていた状況に直面した女性が、損害賠償請求を行っています。会社側が被害者と考えられる女性から事情を聞くことを怠り、加害者側の言い分を容認して対応を怠ったために原告が精神的苦痛を覚え、女性が退職に至ったと判断し、職場環境配慮義務違反による慰謝料を認めた判例があります(仙台セクハラ[自動車販売会社]事件・仙台地裁 01年3月26日判決)。

 精神医学的には覗き見ることを「窃視」と表現し、のぞきで興奮を覚える窃視症、それが日常に支障があっても止められないという窃視障害が知られています。

・窃視症は、裸の人、脱衣中の人、性行為中の人を覗き見ることで性的興奮を得るもの
・窃視障害は、同意のない相手に対する窃視の衝動を行動に移したり、その衝動や欲求のために著しい苦痛、日常の支障を体験したりするもの

 当然のことながら、これらは法律上および対人関係上の問題となりますが、男女とも一定の割合でこうした傾向を持つ人がいることも明らかになっています。しかし、自主的には精神科医による治療に結び付く機会はまれであり、職場では事件となったり、トラブルとなったりして初めて問題が特定されることがほとんどです。一方で、被害を受けた人は強烈なストレスから急性ストレス障害や心的外傷後ストレス障害といったメンタルヘルス不調に悩むことになります。

 こうした問題やリスクを低減するために、職場トイレを就業時間前後に担当者が定期的に見回り、確認してのぞき見や盗撮行為を未然に防ぐことや、防犯ブザーを設置して関係者が現場に急行できる体制を整備するといった対策が必要とされています。

 (「職場トイレのリスク管理」は随時掲載します)

亀田 高志(かめだ・たかし)
株式会社健康企業代表・医師・労働衛生コンサルタント。1991年産業医科大学卒。大手企業の産業医、産業医科大学講師を経て、2006年から産業医科大学設立のベンチャー企業の創業社長。16年に退任後、健康経営やメンタルヘルス対策等のコンサルティングや講演を手がける。著書に「【図解】新型コロナウイルス 職場の対策マニュアル」「【図解】新型コロナウイルス メンタルヘルス対策」(エクスナレッジ)、「健康診断という『病』」(日経プレミアシリーズ)、「課題ごとに解決! 健康経営マニュアル」(日本法令)、「改訂版 人事担当者のためのメンタルヘルス復職支援」(労務行政)などがある。

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