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あなたの職場トイレは安全ですか? 増加するリスク 職場トイレのリスク管理  健康企業代表・医師 亀田高志

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 反対意見多数でも方針通り改正

 厚生労働省は2021年6月、事務所則や安衛則を改正するにあたって、男女別の原則や決められた数を維持した上で、独立個室型トイレを少人数の事務所であれば男女別の設置に代替できることや規模が大きなオフィスで便房の算定に含めてもよい、とする方針を示しました。ところが、6月末からパブリックコメント(意見公募)を実施したところ、多数の反対意見が寄せられてSNS(交流サイト)で拡散する事態となりました。9月上旬に公布する予定を延期し、3カ月程度の期間をおいてそうした意見も踏まえた上で、当初の方針通りに次の例外措置が認められることになりました。

・常時10人以内の事務所では独立個室型トイレを1つ設置すれば男女別に設けなくともよい
・男女別の便房が設置されている場合に、独立個室型のトイレ1つあたり10人分をカバ―していると算定できる

 取り上げられた独立個室型トイレにあたるのは、多機能トイレ、バリアフリートイレ、ユニバーサルトイレ等です。便利で快適であるがゆえに、駅や百貨店、オフィスビル等の独立個室型トイレを日ごろから利用している人がいるかもしれません。

 今回の職場のトイレのルール改正では、厚生労働省として職場トイレのリスクを考慮し、事業者に対して様々な対策を求めています。例えば、内部に他者が侵入して施錠された場合に退避困難となるほか、施錠された便所内で体調不良者が発生すると救護が困難となるので、非常用ブザー等の設置や外部から解錠できるマスターキーを用意することを求めています。また、男女がトイレを共用した場合の風紀上の問題や心理的な負荷、消臭や清潔保持のマナー、サニタリーボックス(汚物入れ)の管理、盗撮等の犯罪行為の防止措置まで、幅広い問題に注意を促しています。

 出生時の性と自認する性が異なるトランスジェンダーの方が職場のトイレを使用した際に同僚がクレームを申し立て、上司や職場側が禁止しようとするトラブルが生じたケースがあります。また、従業員の高年齢化に伴い大腸がんやぼうこうがんの治療を受け、人工肛門や人工ぼうこう(共に「ストーマ」とも呼ぶ)を持ち、トイレ内で排せつ物を処理する必要性のある「オストメイト」の人が増加していくことにも目を向ける必要があります。

 足元では収束する傾向にある新型コロナウイルス感染症の特にオミクロン変異型等では、飛沫より小さなエアロゾル(空気中の微粒子)の状態で浮遊するウイルスによる感染にも注意が必要です。歯と歯茎の健康への意識の高まりから職場のトイレで歯磨きする人もいますが、トイレで感染するリスクも考慮しなければなりません。

 これらの問題のうち、互いに同じ職場に勤める仲間によるのぞき見や盗撮等は特におぞましく許されないことだと感じることでしょう。けれども、職場に限らず、女性用トイレでののぞき見や盗撮被害の増加が指摘されています。

 増加する盗撮事案

 例えば、法務省による資料では職場の内外で盗撮事案が増加していることが明らかにされています。

・「下着等の撮影」及び「通常衣服を着けない場所における盗撮」を含む盗撮事犯の検挙件数は10年の1741件から19年は3953件に増加している。
・犯行場所別の検挙件数では、事務所等では、17年が31件、18年は67件、19年は92件と顕著に増加している。
・トイレを含む「通常衣服を着けない場所」では、17年が426件、18年は653件、19年は920件と同様の傾向がある。
(出所)「性犯罪に関する刑事法検討会第6回会議」(20年9月24日)配布資料41 「盗撮事犯の検挙状況」から抜粋

 これらの事案は風紀上の問題を超えて犯罪行為であり、軽犯罪法では「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」に対して、拘留又は科料に処するとの定めがあります(同法第1条23項)。

 各都道府県の迷惑行為防止条例では懲役や罰金の刑罰が定められています。例えば、東京都では6カ月以下の懲役又は50万円以下の罰金(撮影した場合は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)、常習であれば2年以下の懲役又は100万円以下の罰金(撮影した場合は2年以下の懲役又は200万円以下の罰金)に処する、と定められています。

 

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