日経SDGsフォーラム

異常気象への備え SDGsが指針 常識超える災害 保険会社に期待

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 ふだんは空気のような存在だが、いざ災害や事故が起きたとき、頼りになるのが損害保険。これまでの常識が通用しない自然災害が頻発する中で、損保の出番が増えている。その対応の指針になるのが、国連が定めたSDGs(持続可能な開発目標)。損保には何が求められているのだろうか。

リスクの多様化 商品開発で対応

 「毎年が異常気象」と言われるようになって、もう何年になるだろうか。2021年も、予想していなかったような自然災害が各地を襲った。

 静岡県熱海市で土石流による災害が起きたのが7月。8月には梅雨のような季節外れの大雨が続き、西日本を中心に土砂災害や浸水害が発生した。北海道では最高気温が35度以上の猛暑日が15日続き、最長記録を更新。そこに新型コロナウイルスが重なった。感染拡大の収束がなお見通せない中、経済と社会を疲弊させている。

 そんな不確実な時代だからこそ、役割が期待されるのが保険だ。不測の事態を前に「補償」が重みを増す。東京海上ホールディングスの小宮暁社長は「安心と安全をお届けする」と話す。

 そのために必要な点はいくつかある。

 一つは、暮らしとビジネスを取り巻く環境が激変する中で、どんなリスクが潜んでいるかを明らかにすることだ。新たなリスクに対応する保険商品を開発するためだけでなく、専門的な知見にもとづいてコンサルティングサービスを実施し、顧客のリスクを軽減するうえでも意味を持つ。

 加えて重要なのが、保険金を確実に支払えるように準備することだ。その手立ての一つが、自然災害による保険金の支払いに備える「異常危険準備金」。東京海上グループの6月末の合計額は、1年前より7%増えた。保険金の支払いで経営が揺らがないようにすることは、顧客の安心につながる。

 保険によるリスクの引き受けが、特定の地域に集中しないようにすることも欠かせない。東京海上ホールディングスは時間をかけて海外の保険会社の買収を進め、リスクを国際的に分散した。

 

 気候変動対策にも国内外で取り組んでいる。東京海上グループ全体で30年度に15年度比で排出する温暖化ガスを60%削減する目標を掲げた。主要な拠点では再生エネルギーの導入比率も100%を目指す。マングローブの植林などを通じ、8年連続でカーボンニュートラルを達成した。

 一連の取り組みを地道に続けるには、長期的な視点を持つことがますます大切になる。国際的なコンセンサスを得たSDGsはそのための指針。息の長い課題に保険技術でどう応えるか。腕の見せどころだろう。

(編集委員 吉田忠則)

不確実な時代、社会課題の解決で成長――
 かつて経験したことのない不確実な時代が到来しました。ここ数年、いろいろな分野で始まっていた構造変化が、コロナによって加速しました。
 先が見えないからこそ、いつの時代も変わらない我々のパーパス(目的)に立ち返る必要があります。それは社会や顧客の「いざ」を守ることです。
 災害や事故がいざ起きたとき、明日からもとの暮らしに戻れるように支える。保険の基本的な役割です。顧客が未知の明日に向け、いざ挑戦しようというときに支えることも大事です。
 では取り組むべき重点課題は何か。それを検討し、4つを設けました。気候変動対策の推進と、健やかで心豊かな生活の支援、災害レジリエンス(復元力)の向上、ダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包摂)です。
 あらゆるステークホルダーに価値を提供できるようにすることも大切です。その中に未来世代を加えました。子どもたちを念頭に経営方針を考えると、中長期的な視点で持続的な社会をつくっていくべきだという意識が高まります。
 子どもたちのために長年手がけていることがいくつかあります。小学校などを社員が訪ね、環境問題について教える「みどりの授業」などです。
 環境問題には本業でも取り組んでいます。2020年には洋上風力発電設備の工事中や操業中のリスクを包括的にカバーする保険を国内で発売しました。再生可能エネルギー事業に関するリスクに特化した米国の保険総代理店も買収しました。
 本業をしっかりやるほど、世の中のためになる。そんな会社でありたいと思います。社会課題の解決に貢献してはじめて、会社も成長できるのです。

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