アフターコロナの働き方

選択的週休3日制 先行企業から見えた成功の条件 同志社大学政策学部教授 太田 肇

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 私はこの連載の「週休2日と大違い!週休3日に3つの期待と3つの不安」で選択的週休3日制の功罪を取り上げた。同制度については引き続き関心が高く、今回は選択的週休3日制が成功する条件について、導入する企業、利用する人それぞれの立場からあらためて考えてみたい。

「選択できること」が導入のネックに

 週休3日制になれば、休日を利用して副業をする人が増えるだろう。それによって人材不足の業界に労働力が供給され、経済の活性化につながる。また週の半分近くは出勤しなくてもよくなるので居住地の制約がなくなり、地方移住が進む。仕事と育児や介護が両立しやすくなり、不本意な離職を強いられる人が減る。さらに休日を利用して大学や大学院で学び直す人が増え、専門能力の向上やキャリア開発にもつながるはずだ。このようなバラ色のシナリオが頭に浮かぶ。

 しかも希望者だけが制度を利用すればよいのだから社員にとって選択の幅が広がるなど、いいことずくめのようだ。

 ところが、実はその「選択的」というところが逆に別の問題を引き起こしかねず、制度普及のネックになりそうだ。

 ヨーロッパなど一部の国では、すでに週休3日制を取り入れているところがある。日本でも中小企業を中心に週休3日制を導入し、生産性の面でも、また人材の獲得や社員の満足度の面でも望ましい成果をあげているケースが存在する。しかし、それらの成功例はほとんどが全社員一律の導入であり、もともと出勤日数を自由に選べる特殊な企業を除き「選択的週休3日制」を取り入れている例はほとんどみられない。

 とくに日本企業では、制度を導入するうえでの問題点が多い。一人ひとりの仕事の割り当ても、仕事と報酬の関係も不明確だからである。

あいまいな仕事の分担が混乱を招く

 わが国ですでに選択的週休3日制を導入した企業や導入を計画している企業の例などから、制度はつぎの3タイプに分けられる。

(1)選択しない社員との公平性を図るため、選択したら休日が増えるぶん(2割程度)給与を削減する。

(2)休日が増えたぶんの労働時間を出勤日に上乗せし、給与は削減しない。

(3)給与削減も労働時間増も行わないかわりに、成果で管理する。

 いずれのタイプも、仕事と報酬の関係があいまいな「メンバーシップ型」雇用では問題が生じるおそれがある。

 まず(1)では、給与は削減されたにもかかわらず従来どおりの仕事量をこなすよう求められる可能性がある。(2)では、恒常的に残業が行われている職場の場合、選択しない人との間で実労働時間に不均衡が生じかねない。そして(3)では、そもそも個人の分担が明確でなければ成果で管理することが難しい。

 それだけではない。個人の分担が明確でなく、課や係など集団単位で行う仕事が多いと、特定の社員が休めば仕事が回らなくなる恐れがある。また担当する業務によって週休3日を選択しやすいところもあれば、顧客対応が必要だったり、多忙だったりして選択できないところもある。欧米企業のように自分が選んだ業務(職務)なら納得もいくだろうが、日本では会社によって配属が割り当てられるので、いっそう会社への不満や社員間の不公平感が生まれやすい。

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