日経SDGsフォーラム

新時代の「繋がり」どう構築 なりわい にぎわい SDGsで構築

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お酒の効能を伝える「酒に十の徳あり」。適度なアルコールの摂取は「位なくして貴人に交わる」となり「万人和合す」ともある。大人のコミュニティーを支える無形なソーシャル・キャピタルの役割を担う。新型コロナウイルス下、人との繋(つな)がりを物理的に遠ざけてしまう今、新たな繋がりをどのような形で再構築するか。SDGsの数あるテーマに照らしていけば、おのずとその道が見えてくる。

地域の食文化 酒類通じ醸成

 宮城県東松島市。海岸沿いに広がる延べ約19ヘクタールの土地で、黄金色に実った約150トンの大麦が収穫された。10年前、東日本大震災の津波が襲ったこの農地は塩分が抜けきらず、雑草も大きくならなかったという。アサヒグループホールディングス(アサヒGHD)はこの土地の再生を目指し、東松島みらいとし機構(HOPE)と協力して耐塩性が強いとされる大麦の中から気候に適した品種を特定。「希望の大麦プロジェクト」と名付けられた取り組みは今年で8年目を迎えた。

 大麦は「アサヒと親和性のある自然からの恵み」(勝木敦志社長)として地域創生とアサヒの事業とが並走できるところに着目。これまでに大麦を使った菓子やクラフトビールを商品化。今年からはなりわいとにぎわいのために、もっと息の長い取り組みとしてウイスキーの製造に乗り出した。いま、精麦作業の真っ最中だ。「栽培から収穫、製造、そして生活者の手に届くまで繋がっていくところが消費財メーカーの強み」(勝木社長)だ。

 繋がりは新たな価値を創造する。今年のヒット商品、缶を開けたらきめ細かな泡が出る「スーパードライ 生ジョッキ缶」。これは3年ほど前に塗料メーカーとの雑談から生まれた。生活者の期待以上の商品はこんなささいな繋がりから生まれる。

 アサヒGHDはコミュニティ活動のスローガンを「RE:CONNECTION(リ・コネクション)」と定めている。食、地域環境、災害支援を重点領域とし、東北支援だけでなく、事業と絡めてグローバルにSDGsの考えに落とし込む。例えばオーストラリア。農業国でありながら干ばつの脅威と隣り合わせにある。アサヒGHDが2020年に買収した豪州最大のビール会社、カールトン&ユナイテッドブリュワリーズが醸成過程の余剰水を物流業者に渡して巨大なタンカートラックで農地まで運ぶ。地域社会への恩返しだ。昨年は約68万キロリットルが乾いた農地を潤した。水に無駄などあってはならない。

 酒類は長い年月をかけて国、地域社会の食文化を醸成している。グローバル展開を進めるアサヒGHDは世界から社会の風をいち早く感じ取ることができる強みがある。海外駐在の長かった勝木社長は「欧米は環境規制などで極めて高いハードルを設定し、それに向けて解決のための戦略を練る。日本は積み上げ方式だ」と危機感を募らせる。社会に与えるコストの開示をどれだけ対応できるか。「未来の社会からも評価されるアサヒGHDになりたい」と勝木社長は力を込める。

(編集委員 田中陽)

甲子園の芝にもビールが一役――
 熱戦が繰り広げられている全国高校野球選手権大会は、数年前まで、大会の終盤になると甲子園球場の外野の夏芝は球児たちのファインプレーによって一部、茶色くなることがありました。だが最近は夏芝は枯れずに緑の絨毯(じゅうたん)のまま。入念な手入れのたまものに違いありませんが、そこにビールの副産物が肥料として一役買っています。根付きがよく、免疫性にも優れていて、全国の農地やゴルフ場でも活用されています。
 酒類、飲料などの消費財は誰からも目に付くだけに社会から厳しい視線にさらされがちです。水、アルミ、ペット樹脂。限りある資源の無駄使いはないか。消費の現場では責任ある飲酒や糖分など健康面でのチェックも入ります。
 スーパードライやドライゼロなどでは「gマーク」(二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギーであるグリーン電力を活用)を表示。累計では食品業界最大の150億本にもなっています。これからも再生可能エネルギーの普及・促進策と分散型エネルギーネットワークシステムの多様な形で電力を調達して商品を作っていく考えです。
 温暖化ガス削減では15年比で30年に30%の削減を公表していましたが昨年、19年比で50%に引き上げることにしました。海外を含めて全72工場のうち、65工場で再生可能電力の100%を達成が見えてきました。世界の高い目標に目線を合わせないと生き残れません。

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