実践・営業デジタルシフト

デジタルシフトで企業改革を加速するJTB グローバルインサイト合同会社代表 水嶋玲以仁

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デジタル時代に求められる営業のスキル・マインドセット

 さらに矢野氏は、これからは、チームプレーの重要性が増していくと語る。

 「弊社の営業は、特定の箇所を除いて基本的には、お客様の購買プロセスにおける、情報の提供、企画提出から添乗業務、精算業務に至るほぼ全てを、一人で担っていることが多く、野球にたとえるなら『先発完投型』の営業をずっとやってきたわけです。

 実際、お客様のことを一番理解しているのは営業担当者であり、その思いが強いがゆえに、分業制ともいえるデジタルマーケティングやインサイドセールス導入に懐疑的な営業担当者が一定数いたのも事実です。

 私ももともとは営業個所に所属していましたので、『デジタル上でお客様と接点を持ったとして、何ができるのか』、『インサイドセールスは、自分たちのお客様に対して何をしてくれるんだ』といった疑問を持ってしまうのは無理のないことだとも思います。

 しかし、お客様に対して、今以上の価値を提供するためには、デジタルシフトは欠かせない取り組みであることは明らかです。そして、デジタルマーケティング活動(法人ウェブサイトやメルマガ、セミナー、インサイドセールスなど)全てが営業そのものであり、全体として顧客体験の価値を高めるものでなければなりません。

 そうした営業スタイルを実現するためにも、それぞれが、お互いの役割を理解し、自らの役割をしっかり果たす。ラグビーで言うところの“One for All, All for One”でしょうか。今後は、これまで以上にチームプレーへの貢献が重要になっていくでしょう。ただ、チーム戦だからといって、他人任せになるのではなく、『最後は自分が決めるんだ』というような矜持(きょうじ)を持ち、責任を果たすスタンスも忘れてはいけません。

 そして、グループ全体として力強く推進するためには、営業担当者のデジタルシフトへの理解と関連部署との親密な連携が不可欠ですので、社内での継続的な啓蒙活動も重要な施策の一つとして捉えています」 

 2021年2月、啓蒙活動の一環として開催されたオンライン勉強会の対象者は、全国の営業実務の係長クラス(グループリーダー)500名。その狙いについて、大泉智敬氏(マーケティング推進担当マネージャー)は次のように語る。

 「お客様向けにマーケティング活動をすることはもちろん重要なのですが、矢野が指摘したように、インナーの視点で営業担当者向けにマーケティング活動をするのも重要だと思っています。その対象として選んだのが、上司も部下もいて、一番のハブになりうるグループリーダーでした。少しでも興味をもってもらうために、営業担当者を主人公にした漫画を製作して、デジタルマーケティングについて説明したところ、実施後のアンケートでは、90パーセント以上の営業担当者が満足と回答してくれました。なかには、『なぜ、こんなに重要なことを、もっと早くて伝えてくれなかったのか』といった叱咤(しった)激励もありましたね。ですから、伝えて、好きになってもらって、最終的には武器として営業で使ってもらうまでやり続ける必要があると思っています。『営業が強いからこそデジタルマーケティングが武器になる』これがキーワードです」

 また、デジタルシフトを実現するために必要な人財の要件定義と育成プランを構築している金井氏は、2023年に向けて、次のようなロードマップを描いているという。

 「社内の体制が整いつつある今、最大の課題の一つは、人財育成だと思っています。2020年、弊社のM&E の取り扱いの多くがオンラインだったことを考えると、コロナ禍が収束し、リアルに戻ったとしても、リアルとオンラインのハイブリッドが主戦場になるのは間違いなく、今以上にチーム制、分業制を推し進める必要があります。

 そのためには、プロデュースする営業担当者だけでなく、手配担当者もデジタル対応しなければなりません。ですから、対象となる社員については、レベル1からレベル3までのグレードを設けて、それぞれ2023年までに、どのようなスキルを身につける必要があるのか、どのように育てていくのかを計画し、それに沿って育成を進めていきます。さらに言えば、デジタル人財の要件定義を実施した上で、該当レベルの社員を何人育てていくのかという、そのための教育体制も構築しているところです」

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