実践・営業デジタルシフト

ソフトバンクの成長戦略 企業や社会のDXを推進 グローバルインサイト合同会社代表 水嶋玲以仁

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チームプレーから生まれた成功事例

 インサイドセールスの部門発足後、認知度向上のために、上野氏をはじめとするメンバーが、折に触れて成功事例を発信してきたことは先述したとおりだが、ここでは、橋本氏が統括するエンタープライズ領域での成功事例を紹介したい。

 本事例は、リテンション業務、SMB層の営業、さらにはエンタープライズ領域の営業を経験したのちに、インサイドセールスの部門に配属になった藤本奈己氏と、かつてSMB層の営業で藤本氏と働いた経験があり、今は直販営業として外資系企業を担当している媚山 優氏のチームプレーから生まれた。

 当初、インサイドセールスの役割、立場が社内的にも周知されていない状態ということもあり、多少の戸惑いを覚えた藤本氏だが、直販営業の下請けではない、新たな案件創出という点にフォーカスして活動を続けていたという。

 「今回の案件に関しては、インサイドセールス側から電話をしたわけではなく、きっかけはお客様からの資料請求でした。お客様が当社のサイトで資料をダウンロードしたことがわかった時点で、すぐに私からコンタクトをとり、ヒアリングを重ねました。その後は、『こういうことを実現したい』『こういった製品を検討している』という情報をお客様からいただき、関係部署に何度も確認し、お客様のご要望に応えられるかどうか、一つひとつクリアにしていったという流れです。

 すぐに直販営業に渡すという選択肢もありましたが、私ももともと直販営業をやっていましたから、要望だけヒアリングした段階でトスアップされると、直販営業側としても受注までのプロセスに困るであろうことが容易に想像できました。ですから、やりとりの内容については媚山さんに逐一連絡していましたが、受注が決まるくらいまで、コミットする気持ちで取り組みました。そういった経緯もあり、実際にお客様と媚山さんをつないだのは、見積もりが出たタイミングでした」

 ソフトバンク内でも、お客様より見積もり依頼をいただくまでインサイドセールスが担当するケースは稀(まれ)だという。その点、トスアップを受ける側である媚山氏はどのように捉えているのだろうか。

 「かつて藤本さんと一緒に働いたことがあるというのは大きかったかもしれません。ここまではそちらでやってほしい、ここからはこちら側が引き継いでやるといったコミュニケーションが円滑にとれたこともあって、安心してお任せしていました。見積もり依頼段階でトスアップしてもらったのですが、実際にはそのあともずっと藤本さんには伴走をお願いしています。お客様の立場からすると、最初に窓口になった人が最後の契約まで関わることで、安心感につながると考えたからです。そのため、見積もり依頼以降は私のほうで担当しましたが、事前の要件定義はすべて藤本さんが調整してくれました。

 また、通常であれば、トスアップしてもらった後、お客様と対面での打ち合わせをして、温度感を合わせるという作業を行うのですが、コロナ禍ではオンラインが中心になってしまいます。お互いの温度感がわからないまま、担当が途中で変わるのはよくないと考えたのも、伴走をお願いした理由の1つです」

 お二人のお話をお聞きすると、互いの状況を把握した上で、的確に役割分担していることがわかる。藤本氏は、「案件の受注確度が低いものをすぐにトスアップすると、直販営業サイドもさばききれないだろう」と配慮し、対する媚山氏も、「今回の大型案件のような場合、一人ですべて対応するのは難しいため、チームで対応したほうがお客様のメリットも高い」と考えているというように、まさに両者の間にあうんの呼吸が成立している。

 また、藤本氏と媚山氏だけでなく、他のメンバーも同じように双方の部署が連携できるよう、当初はトスアップの案件数が評価指標として採用されていたが、現在は、受注利益額がメインのKPIとなっているため、双方が以前にも増して、「受注」という共通のゴールにコミットできているようだ。

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