実践・営業デジタルシフト

ソフトバンクの成長戦略 企業や社会のDXを推進 グローバルインサイト合同会社代表 水嶋玲以仁

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 新型コロナウイルスの影響で、世界的にビジネスプロセスや事業のあり方が大きく変化するなか、営業・マーケティングのデジタルトランスフォーメーション(DX)、すなわち営業デジタルシフトを計画したり、着手したりしている企業が増えています。しかし、期待するだけの効果を得られた企業はほんのひと握り、というのが実情です。この連載では書籍『実践・営業デジタルシフト』(日本経済新聞出版)をもとに、デジタルシフトへの課題は何か、それをどう解決すればよいのか、事例をもとに解説します。今回はソフトバンクの事例を紹介します。

 DX銘柄2021(2021年6月7日、経済産業省発表)に選定された通信キャリアのソフトバンク。法人事業説明会(2021年6月1日)では、通信単体事業から脱却し、企業や社会のDXを推進するソリューションを包括的に提供することで、日本をDX先進国へと導くとともに、法人事業を大きく成長させていくと発表しました。本ケースでは、インサイドセールスとデジタルマーケティングおよび大手企業の直販営業との連携について解説。さらにインサイドセールスの人材教育についても取り上げています。

商材が多角化する時代の営業戦略

 「超人でなければ不可能なレベルにまで、扱う商材の数が膨らんでいる」

 そう語る原田博行氏(法人マーケティング本部 副本部長)は、お客様のニーズや課題に対して、さまざまな先進的な取り組みで応えてきたソフトバンクの営業の最前線で活躍してきた人物だ。

 かつては、数千人を動員した人海戦術(通称「パラソル」部隊)で、Yahoo! BB などの販売キャンペーンを行っていたソフトバンクだが、2008年7月には、iPhone 3Gをいち早く日本市場に投入。その後もPepper(ペッパー)をはじめ、AI(人工知能)、IoT、DX(デジタルトランスフォーメーション)と、新領域へのチャレンジを続け、日本を代表する企業の1つとなっている。今現在はデジタル機器・ツールだけでなく、コワーキングスペースや広告も扱っているため、営業部門が扱う商材はなんと2000以上。一人ひとりのセールスに求められる知識、スキルが高度化していることは想像に難くない。

 原田氏の上長であり、法人マーケティング本部本部長の上野邦彦氏は、ソフトバンクの置かれた現状と課題を次のように語る。

 「ソフトバンクの営業は、商材の多角化、新規顧客の獲得、営業手法の多様化の3点について、常に注力してきました。その中でも、商材の多角化という点はかなり進んでいますし、これからも時代のニーズに応えていくという姿勢は変わりません。もちろん、原田さんのコメントにあったように、1人のセールスがすべての商材を扱うのは簡単ではありません。だからこそ、インサイドセールス、マーケティング、フィールドセールス(直販営業)が連携していかなければならないのです。

 2点目の顧客に関しては、大企業(エンタープライズ)と、中堅・中小企業(SMB)に分けて考える必要があります。ソフトバンクの法人営業は、日本テレコムの直販営業部隊をベースにしていることもあり、当時から大企業を中心に、ネットワークや固定電話を提供してきました。そのため、今現在、1800社あまりあると言われる大企業(年商1000億円以上の上場企業)に対しては、95%という極めて高いタッチ率を実現しています。

 一方で、日本企業の約9割にあたる中堅・中小企業(年商50億円以下)に対しては、自社だけでなく、パートナー企業と協力して開拓する体制をとってきました。このセグメントに対しても40万社程度にタッチしているため、決して数が少ないわけではありません。それでも合計380万社あると言われているSMBへのタッチ率は10%未満であり、まだまだ成長の余地があるのも事実です。

 これはどの企業のセールスも同じ課題を抱えていると思いますが、数十万社というお客様に対して、どうすれば効率的に、リテンション活動、アップセル、クロスセルを行い、最適なソリューションをスピーディーに提供できるかは長年の課題でした。そして、それを解決するために、営業手法の多様化の1つともいえるインサイドセールスに白羽の矢が立ったわけです」

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