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「デジタル人民元」は国際金融をどう変えるか? 大和総研の長内智氏・中田理恵氏に聞く

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ビットコインで資金流出の苦い経験

 中国が通貨のデジタル化を急ぐ背景について、国内向け、国際向け、将来構想の3つの視点から合計6つの理由を中田氏は指摘する。まず国内向けに(1)暗号資産(仮想通貨)や民間デジタル通貨の流通を防ぎ、国境をまたぐ資金移動を管理(2)国内銀行を側面から支援し金融リスクの管理を強化――が狙いとしている。中田氏は「2010年代半ばのビットコイン普及で、中国は大規模な資金流出が発生した苦い経験を持つ。フェイスブックのディエム発行などへの危機感がデジタル人民元の開発を促進させた」と指摘する。脱税防止やマネーロンダリング、テロ資金供与対策にも資金移動を監視できるCBDCは有効だ。

 さらに国内における銀行の地位低下で、金融リスクが高まるのを警戒していると中田氏はみる。中国ではアント・グループやテンセントなどのフィンテック企業がスマホ決済市場に圧倒的な存在感を誇示している。これらの企業が金融規制に縛られずに業容拡大すれば、政府の金融政策が効かなくなる恐れも出てくる。デジタル人民元を使った新たなサービス展開を銀行側に促す狙いだ。

 国際的な狙いとしては(3)金融インフラが未整備な他国へのサービス提供(4)国際クロスボーダー決済の効率化――を見込んでいるという。「銀行口座を持たない人々や地域へもデジタル通貨ならば金融サービスが提供できる。『一帯一路』構想やアジアインフラ投資銀行(AIIB)を通じた巨大経済圏への大きな推進力となる」と中田氏。さらに国境をまたぐクロスボーダー決済は、通常国際銀行間通信協会(SWIFT)を通じて行われるものの中継銀行との契約が必要など手続きにコストがかかる。デジタル人民元を国際決済通貨とすれば効率的で低コストの送金を可能とアピールできるとの見立てだ。

 将来への布石は(5)CBDC分野における技術・運用面での主導権(6)人民元の国際化――だ。新型コロナウイルスの感染拡大は収束の見通しが立たず非対面サービスなど経済のデジタル化は避けられない。デジタル通貨発行に踏み切れば先行組としてのメリットが期待できるという。最終的な狙いは人民元の国際化だ。「中国はリーマンショックの2008年以降から、過度に米ドルに依存しない体質づくりを目指してきた」と中田氏は指摘する。「基軸通貨としての米ドルの地位は盤石で、現段階の人民元は挑戦者と呼べる状況にもない。しかし人民元の国際化に向けた布石としては有効だろう」と中田氏は分析する。

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