コロナ倒産の真相

旅行事業のWBF インバウンド狙った積極投資が裏目 帝国データバンク 情報部

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ホテル事業単体のスポンサー探しは難航

 その後は「不動産オーナーや金融機関など債権者との交渉が上手く進んでいない」「コロナ禍における市場環境から、スポンサーがなかなか見つかっていない」など、グループ全体を不安視する声が飛び交いました。

 実際、その間にWBFは収益を当面見込めない「高速バスドットコム」などのウェブ予約システムをグループ外の第三者へ譲渡するなどして財務状況の安定化に努めていました。しかし、緊急事態宣言の期限が5月末まで延長され、予約キャンセルによる払い戻し、人件費などの固定費、コロナ前の顧客旅行に対応した支払いで資金繰りも限界を迎えつつありました。さらに、再生手続中であるWHRの債務について、WBFに対し連帯保証人として約34億円と多額の債務履行を求める勧告が続いていました。

わずか数カ月の倒産劇、星野リゾートがスポンサーに

 このままいけば予約済みや旅行中の顧客に迷惑がかかる事態となり、第二の「てるみくらぶ 」となって社会問題化する可能性も考えられたこと、そして水面下で探索していたスポンサーが見つかったことから、WHR倒産の2カ月後である6月30日付でWBFおよびWBHが民事再生法の適用を申請しました。スポンサーに名乗りを上げたのは再生請負人と言われる星野リゾートでした。

 同グループの倒産は、リスクを負って果敢に投資を行う会社本来のあるべき姿としてやむを得ないものだったという見方もあります。一方で、経済情勢や災害、テロなどの影響を受けるリスクの高い産業にも関わらずリスクヘッジを怠り、上場を目前に投資を見誤った結果であるとも言えるでしょう。

 不運ともいえるウイルスの感染拡大によって抱えていた経営リスクが一気に表面化した形でした。負債総額はWHRが160億円、WBFが278億円、WBHが73億円、WBF単体だけでも、現時点のコロナ倒産で最大の負債額であり象徴的な倒産となりました。

(※)新型コロナウイルス関連倒産の定義
新型コロナウイルス関連倒産(コロナ関連倒産)とは、帝国データバンクが全国の事業者の倒産取材をする過程で新型コロナが倒産の一要因または主因となったことを当事者(社長や役員)または代理人(弁護士)が認めた場合、また、取引先への通知などにその旨の記載が確認できた倒産を指します。
帝国データバンク 情報部 著『コロナ倒産の真相(日経プレミアシリーズ)』(日本経済新聞出版、2021年)、「第3章 観光業界-倒産は3つのパターンに分類できる」から抜粋。転載にあたり一部編集しました。
帝国データバンク 情報部
1900年創業の民間信用調査会社。国内最大級の企業情報データベースを保有。帝国データバンク情報部は、中小企業の倒産が相次いだ1964年、大蔵省銀行局からの倒産情報の提供要請に応じるかたちで創設。情報誌「帝国ニュース」の発行、「全国企業倒産集計」などを発表している。

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