コロナ倒産の真相

旅行事業のWBF インバウンド狙った積極投資が裏目 帝国データバンク 情報部

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 新型コロナウイルス禍が企業に大きな打撃を与えています。収束の見通しがつかないなか、破綻を余儀なくされた企業もあります。この連載では書籍『コロナ倒産の真相』(日本経済新聞出版)をもとに、新型コロナが企業にどう影響したのかを事例をもとに解説します。これを知ることは、今後また起きるかもしれない大きな変化への対応力を高めることにつながるはずです。今回は旅行商社のWBFグループの事例を紹介します。

 「旅行事業を手掛けるWBFグループは大丈夫だろうか」-新型コロナウイルスの感染拡大が表面化し始めた2020年3月頃、金融機関や取引先の間で同グループを不安視する声が飛び交いました。LCCの就航拡大や外国人観光客の増加などを背景に業績を伸ばし、積極的なホテル開発も進めていたことから、あらゆるリスクを抱えていた同グループが一気に経営難に陥ることは容易に予想できました。
 2020年4月に持株会社の上場を目指していましたが、その4月にホテル事業のWBFホテル&リゾーツ(株)が民事再生法の適用を申請。6月には旅行事業の(株)ホワイト・ベアーファミリー、持株会社のWBFホールディングス(株)が続いて同措置となり、3社合計の負債総額は約500億円を超える最大のコロナ関連倒産となりました。

IT旅行商社として躍進、格安ツアーで高い知名度を誇る

 WBFグループは純粋持株会社のWBFホールディングス(以下、WHD)が100%出資する形で、主に事業会社であるホワイト・ベアーファミリー(以下、WBF)、WBFホテル&リゾーツ(以下、WHR)、WBFリゾート沖縄(以下、WRO)の3社からなるグループ会社です。中でも中核企業として、もっとも歴史を持つのがオンライン旅行事業を手掛けるWBFでした。

 1977年、WHD代表の近藤康生氏が関西学院大学時代の友人とともにスキーサークルの運営や学生ツアーの企画・催行を目的として創業し、81年に法人改組したのが始まりです。スキーブームの終焉(しゅうえん)やインターネットの普及など時代の変化に対応し、近年はIT旅行商社を標榜してインターネットを活用した企画旅行の販売や旅行手配事業を手掛けていました。特に国内では沖縄と北海道、海外はアジア圏へのツアーに強みを持ち、「しろくまツアー」「ハッピーホリデー」などの名称で展開する格安ツアーは相当な知名度を誇っていました。あるメタサーチサイトで「沖縄」「北海道」「アジア諸国」などのツアープランを検索し価格順に並べると、同社のプランが上位のほとんどを占めたほどです。

 98年にパックツアーのネット販売を開始して以降、紙パンフレットや法人営業を廃止するなど大きくかじを取り、「団体旅行」から「個人旅行」へと観光形態の変化にうまく対応し個人旅行者を集客しました。2009年9月期には年売上高100億円を突破するなど旅行業界で存在感を強め、グループでは2000年代に入り徐々にホテル事業に進出。沖縄と北海道を中心として旅行事業と連携したホテルの運営開発事業を手掛けていきました。

ホテル開発の過熱化、上場を視野に

 オンライン旅行事業とリゾート地でのホテル事業が実を結び、成長を見せていた同グループにとって2010年以降のLCC就航拡大と外国人観光客の大幅増加がさらなる追い風となります。そしてこの時期の過熱化した投資が、後にコロナ禍で一気に経営を反転させることとなります。

 旅行事業ではLCCを組み込んだ格安ツアーの販売で人気を博し、ホテル事業ではインバウンド拡大に伴うホテル不足に対して積極的な投資を開始します。特に本社を構える大阪・関西においては、地元の信金信組と地銀から手厚い支援を得てビジネスホテルの新規開業計画をどんどん進め、2017年頃から2020年にかけて次々とホテルを開業しました。

 他方、沖縄のホテル事業を担うWBOでは、那覇空港から車で15分程に位置する瀬長島において、2013年に天然温泉を備えたリゾートホテル「琉球温泉瀬長島ホテル」、2015年には商業施設「ウミカジテラス」を開業。グループの中でも独自の開発事業を手掛け、同年10月には「Tokyo PRO Market」への上場(2019年7月廃止)を果たしました。

 観光需要の拡大に対し、先見的な投資を行ってきた当グループはこの数年で業績をさらに急拡大させます。そして、WBHについて2020年4月の上場を目指して準備を開始。その一環として2019年には関係会社間の事業内容を互いに独立したものとすべく、WBFが旅行事業、WHRが北海道・関西・関東のホテル事業、WBOが沖縄・九州のホテル事業と現グループ体制へ再編を進めました。

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