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「AIの不備」どうカバー? 富士通・JCBの挑戦 AI経営のリスク管理 寺嶋正尚・神奈川大教授に聞く(2)

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需要予測モデルを自己修復する「高い耐性学習」

 ――AIの不備をAIで補う手法はコスト削減の点からも関心を呼びそうですね。

 「AIの判断精度を確認するには、入力データと正解データの突き合せる『答え合わせ』が不可欠です。人間が行うと、膨大な作業をしなければなりません。富士通研究所(4月に富士通と統合)が2019年に開発した『ハイ・デュラビリティー・ラーニング(高耐性学習)』は、データ分布の形状の変化をAIが監視し、判断劣化を自動修正する仕組みです。AIをAIが補うシステムです」

 「欧州では19年に市販の音声生成ソフトを使った、なりすまし詐欺事件が発生しました。これを防ぐには、声紋認証技術の活用などが注目されています。声による認証は『Google Home』や『Alexa』のようなスマートスピーカーにすでに実装されています。人工的に作られた音声を声紋に変換すると、高音域のパターンや音の繋がりの滑らかさに、おかしなところが生じるのを見極める技術です。逆に本人ならばノドに痛みがあっても本人だと正しく認識できます。JCBなどがコールセンターで実用化するための実証実験を行っています」

 「不正アクセスではAIと不正テクノロジーのイタチごっこが続いています。指紋認証は、シリコンに指紋を転写することで偽装し、セキュリティーを突破する技術があらわれました。この指紋認証よりも精度が高いとされるのがNECなどの顔認証システムです。しかし今度は顔認証を導入すると、人種問題などプライバシー上の観点が指摘されるようになりました。米マイクロソフトや米アマゾンは開発を見合わせているとされます。現在注目されているのは、富士通などが力を入れている、手のひら静脈を利用した認証システムです。次から次に新しい技術が開発され、実際に使用されています」

 ――人材の採用などにも効率性の観点からAIシステムの導入が目立ちます。

 「やり方によっては、優秀な志望者を逃がしてしまいます。その点米IBMの『パーソナリティー・インサイツ』は文章などを解析することで書き手のパーソナリティーを推定します。性別や出身校などではなく、文章から志望者の感情や性質を見極めてくれます。エントリーシートを読み込ませて、欲しい人材であるかどうかを判断するシステムです」

 ――AI以外で注目したい技術は何でしょうか。

 「ひとつはブロックチェーンです。多数の参加者に同一のデータを分散保持させる、分散型台帳の仕組みです。一度記録されたブロックのデータは、後続の全てのブロックを変更しない限り、遡って変更することができません。ブロックチェーンは改ざんが非常に困難な技術といわれており、AIと補完関係を築くことのできます」

 ――AI経営を推進するのは大変な先端技術の知識が必要ですね。

 「AIを経営に利活用する際、確かに先端技術の知識は不可欠です。しかし役員陣を技術系の出身者ばかりにする必要はありません。日進月歩の技術革新が続くなか、経営者はAIの担当者に任せっきりにすることなく、もう一段上の立場から、自社にとって何が役に立つか、そのリスクは何か、どのようにしたらそのリスクをマネジメントできるかなど、アンテナを張っておくべきだと思います」

(聞き手は松本治人)

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