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22年卒選考解禁 これもセクハラ?面接官のNG例と注意点

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トップダウンで進めないとハラスメントはなくならない

 労働問題に詳しい今津幸子弁護士は「就活ハラスメントは企業にとっての重大な『レピュテーション(評判)リスク』と認識し危機感をもって対処すべきだ」と話す。レピュテーションリスクを軽視したため急速に業績が悪化するケースもあるという。「就活生は従業員らに比べ法的な立場は弱いが、セクハラ事案などが顕在化すれば企業へのダメージは大きい」。

 「面接官には、企業を代表する顔であるとの自覚を持たせなければならない。そのためには地道な社内教育が欠かせない」という。複数の内定を受けるような優秀な学生は面接官から受けた印象などで就職先を決定する場合が多いからだ。

 さらに今津氏は「ハラスメント対策はトップダウンで進めるべきだ」と指摘する。人事担当者が社内でハラスメント研修を企画しても、研修費用がコスト増になるとしてトップの反対で実施できなかったケースが中堅・中小企業などではあるという。「ハラスメントは許さない、というトップの強い意思がなければセクハラは絶対になくならない」と強調している。

セクハラに嫌悪感を示す海外ファンド

 大手など約60社の顧問弁護士を務める松本裕之弁護士に「就活パワハラ・セクハラ」の企業リスクを聞いた。

 ――採用活動でのハラスメントが問題になった場合、企業は具体的にどのようなダメージを受ける可能性がありますか。

 「まず企業の法的責任です。当該従業員に対する損害賠償請求が認められると民法715条の『使用者責任』で、企業も損害賠償責任を問われるケースが多い」

 「そうした問題がSNSを通じ拡散されれば、学生の応募が減少し、優秀な学生の採用が難しくなるでしょう。同じ企業を志望する学生同士がSNSで情報交換するのは一般的になっています」

 「海外ファンドからの投資受け入れをしているような場合、いわゆる『モノ言う株主』からの責任追及も考えられます。海外ファンドはセクハラに関して嫌悪感が強い。さらにハラスメントが報道されて株価に大きく影響したような場合には、株主から代表訴訟の余地もあります」

 ――人事担当者には具体的にどうアドバイスしていますか。

 「多くの場合、ハラスメントと考えずに行っているケースが多い。採用活動が始まる前に厚労省のガイドラインや裁判例を題材にして具体的事例にあたる研修を行っておくことを強く勧めています。さらに被害に遭った就活生が相談できるような窓口を準備しておくこともハラスメント抑制効果があります。実際にそのような窓口を積極的に用意する企業も見られるようになってきました」

 ――就活ハラスメントを引きずって入社後にメンタル不調になったようなケースもあるのでしょうか。

 「普段の仕事は極めて優秀にこなしているが、業務の中でパワハラを行った担当者との十分な会話ができなくなったケースが実際に起きています」

 ――オンライン面接でのNG行為は何でしょうか。

 「コロナ禍の中での採用活動としてオンライン面接は有効です。しかし普段の生活態度を検討するなどとして室内を見せるよう要求するのは慎むべきです。面接官は対面面接で行う以上の質問をするのは問題であるとの意識を持ってほしい」

LGBT対応は就活ハラスメントと別の対応を

 ――LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)への対応を企業は急いでいます。就活への影響は?

 「就活ハラスメントとは異なるアプローチが必要になります。LGBTを理由とした就活の差別は全く認められません。履歴書に性別欄がないものも増えてきています。しかしLGBTであること自体は、人事担当者は本人から話してもらう以外に知る手段がありません」

 「LGBTである人が人事担当者に相談した上で就活する場合は、情報管理に十分な注意が必要なのはもちろんです。しかし入社後の設備利用などには、どうしても周囲の理解が必要なため一定の範囲で情報共有が必要になることもあります」

 「各企業は必要性は感じているものの、具体的指針は確立されていないのが実態です。LGBTである人ごとに個人的考え方も大きく異なるため、相談を受けた担当者は本人と十分に話し合って意思に沿ったケースごとの対応が求められます」

(松本治人)

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