アフターコロナの働き方

副業は「自分ファースト」で 会社推奨は残業と同じ? 同志社大学政策学部教授 太田 肇

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 副業への関心が高まっている。収入を増やしたい、余裕のある生活を送りたいといった経済的な目的のほか、本業では得られないような刺激や自己実現、それに将来の独立やキャリアアップを視野に入れて副業を希望する人が少なくない。

 海外では多くの国で副業がごく普通に行われており、会社に勤めながら自分で会社を経営する人や、他社の役員を務める人なども珍しくない。民間企業だけでなく終業後の時間や休暇を利用して民間企業やフリーランスで働く公務員もいる。オーストラリアのある市役所では、人事課長が世界的に活躍するプロのレーサーという別の顔を持っていたのに驚かされた。

 いっぽうわが国では、これまで多くの企業が社員の副業を認めてこなかった。健康管理や労働時間管理の難しさ、情報漏洩のリスク、それに本業に支障が出ることなどが表向きの理由である。

 ところが近年、政府は成長戦略、働き方改革の一環として副業を後押しする姿勢を見せている。厚生労働省が2018年に策定した副業・兼業の促進に関するガイドラインで、企業の対応についての基本的考え方として「原則、副業・兼業を認める方向とすることが適当である」と明示した。さらに新型コロナウイルス禍の影響で仕事が減った企業から、人材が不足している企業や地方へ労働力の移動を促進し、経済の活性化につなげたいというねらいから、企業に対して社員の副業を認めるよう促すようになった。

本業への還元を期待する企業

 それでもまだ企業の反応は鈍く、社員の副業容認には消極的な企業が多いのが実態だ。日本経済新聞社と日経HRが20年10月下旬に行った調査では、回答した4279人のうち勤務先が副業を禁止しているという人は55.3%で、容認しているという人は28.1%にとどまった。

 社員の副業を認めている企業も、何らかの形でその成果が企業に還元されることを期待しているところが多い。実際に社員の副業を解禁した大手企業の事例では、たいていが解禁の理由として社員のスキルアップや視野の広がり、人脈形成など会社にとっての利点をあげている。

 またリクルートキャリアが19年に行った調査でも、兼業・副業を推進もしくは容認している理由や背景として「人材育成・本人のスキル向上につながるため」「社員の離職防止(定着率の向上・継続雇用)につながるため」「社外の人脈形成につながるため」「イノベーションの創発、新事業の促進につながるため」という回答が、それぞれ2~3割程度存在する(複数回答)。

 企業だけではなく、社会の受け止め方も含め、社員の副業は企業にとってメリットがあるので認めることが望ましいという考え方が多い印象だ。つまり、そこでは「個人の権利としての副業」という認識は薄い。

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