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デジタル給与解禁へ 導入メリットと懸念は? 長内智・大和総研主任研究員に聞く

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 キャッシュレス決済サービスを利用する「デジタル給与」の解禁へ関心が高まっている。銀行口座ではなく「PayPay(ペイペイ)」や「LINEペイ」などのスマホアプリにチャージ(入金)される仕組みだ。労働基準法施行規則を改正し、早ければ2021年度中にも解禁が見込まれる。大和総研の長内智・主任研究員は「デジタル給与導入は、長期的にキャッシュレス化、決済・送金コストの低減、新規ビジネスの創出などで日本全体の生産性が高まる」と指摘する。

資金移動業者に5つの要件満たすことを求める

 厚生労働省が示した制度設計案は、キャッシュレス口座を手掛ける資金移動業者に(1)債務履行が困難になった場合に労働者への債務を速やかに保証する仕組みを設ける(2)不正取引などで損失が生じたときに補償する(3)ATMなどで1円単位で引き出せ、月1回は手数料なしで換金できる(4)業務や財務状況を適時に厚労相に報告できる体制がある(5)業務を適正・確実に行える技術的能力がある――の5要件を求めるというものだ。登録済みの業者はすでに約80社。労働者の同意を前提とし、業者が倒産した場合の対応などで懸念を示す労働組合の理解を得ることを目指す。

 大和総研の長内智・主任研究員はデジタル給与について、「外国人労働者の受け入れ体制を整備する『ペイロールカード』導入論議が17年に始まり、キャッシュレス社会実現を目指す潮流の中で労働者全体の給与のデジタル化へと発展した」と指摘する。ペイロールカードは銀行口座を持てない労働者にプリペードカードの形として支払う仕組みで、米ビザや米マスターカードなどが発行に関わっている。米国など海外では一般に普及しているという。一方、厚労省の諮問機関である労働政策審議会で今年に入り月1回のペースで議論を進めてきた。

 長内氏は「すでにデジタル給与払いはスタートしている」と話す。労働基準法で規制の対象にならないフリーランスや個人事業主への報酬は一部のアプリを通じて支払うケースが目立ってきているという。労基法が規制する対象は給与だけ。従業員の立て替え経費の精算も民間の電子マネーで送金するケースも目立ってきている。もともと銀行給与振り込みも本来の労基法からみれば例外規定に当たる。

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