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デジタル給与解禁へ 導入メリットと懸念は? 長内智・大和総研主任研究員に聞く

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20代男性の4割が意欲、焦点は労働者の具体的な保護

 「電子マネーにチャージする手間が省け、給与の受け取り時期や回数を選べるなど労働者側にもデジタル給与のメリットは少なくない」と長内氏。公正取引委員会のアンケート調査では、「PayPay」などノンバンクのコード決済利用者の約4割がデジタル給与を検討しているという。日本資金決済業協会の調査でも過去3年以内に送金サービスを利用した約2割がデジタル給与を利用したいとの結果が出たという。長内氏は「20代の若年層に利用意向が高く、女性よりも男性の方が意欲的だ。20代男性の利用意向は約40%にも上る」と分析する。働き方改革で副業の解禁が進めば、複数の支払先の期日を統一するなど柔軟な利用法が広がりそうだ。

 ただ一直線にデジタル給与解禁が進むには課題も少なくない。厚労省の制度設計案が示したような労働者保護をどう具体化するか。20年にはNTTドコモの「ドコモ口座」を使った預貯金の不正引き出しが発覚した。「アカウント乗っ取りなどの不正に加え個人情報漏洩防止にも注意を向ける必要がある」と長内氏。

 デジタル給与は企業側にとっては給与振り込み手数料を抑えて全体のコスト削減につながる可能性がある。給与受け取り方法の多様化で従業員の満足度向上や銀行口座を持たない外国人労働者の確保につながる期待もある。他方、新たな事務処理やシステム化対応も必要になりそうだ。長内氏は「長期的な費用対効果を見極めつつ、対応サービスを絞り込むことも視野に入れるべきだ」と話す。

 日本全体の給与総額は約280兆円。デジタル給与がこれまでの銀行口座を起点とした資金フローや金融システムに及ぼす影響は大きい。それだけに現在の制度設計の時点だけではなく、運用なども継続的にフォローしていくことが欠かせないと説く。「特に労働者保護の点で拙速な議論を進めるべきではない」(長内氏)と警鐘を鳴らしている。

(松本治人)

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