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緊急事態宣言 4ー6月もマイナス成長か 神田慶司・大和総研シニアエコノミストに聞く

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自動車50万台減産なら実質GDPを0.9兆円押し下げ

 一方、懸念材料も表面化している。ひとつは経済活動の業種間格差が拡大している点だ。製造業などが堅調な一方で、感染拡大の影響を受けやすいサービス業では低迷が続いている。神田氏は「世界貿易量は1月に過去最高水準を記録したが、インバウンドを示す国際観光客数は前年を約9割下回ったままだ」と指摘する。

 3月時点の業況判断指数(DI、「良い」と感じている企業の割合から、「悪い」と感じている企業の割合を引いたもの)は、建設、情報通信が公共投資の拡大やデータ通信量の増加を受けてプラスを維持し、非鉄、電気機械、汎用機械などがプラスに転じた。一方宿泊・飲食サービス、対個人サービス、運輸・郵便などは低迷したままだ。「繊維業はテレワーク普及などによる外出頻度の低下でビジネス服やおしゃれ着の需要減少の影響を受けた」と神田氏。これらの業界は、中小だけでなく大手でも資金繰り判断DI(「楽」と感じている企業の割合から、「苦しい」と感じている企業の割合を引いたもの)のマイナス幅が大きくなっているという。

 宿泊・サービスや運輸・郵便、対個人サービス業は就業誘発効果が大きく、生産額が10%変化すると宿泊・飲食は約81万人、運輸・郵便は約50万人変化するという。対個人サービスも約38万人と、輸送用機械(約40万人)と同じ規模の効果を生む。神田氏は「雇用を維持するためにも、キメ細かく業態を見極めて資金繰りを支援する必要性は大きい」と強調する。

 もうひとつの懸念材料は、半導体不足による自動車メーカーの減産だ。新型コロナ流行後にパソコンやデータセンターの半導体需要が急拡大し、5Gも本格的にスタートした。そうしたなか、走行制御用マイコンで大きな国際的シェアを持つルネサスエレクトロニクスの生産子会社が火災にあった。半導体の出荷量が火災前に回復するのは7月以降の見込みだという。日産自動車やホンダ、三菱自動車などが減産する。裾野の広い業種だけに日本経済への打撃が大きい。神田氏は「国内で合計50万台減産した場合、直接的な影響で0.2兆円、関連業界で0.3兆円も実質GDPを下押しする」と分析している。影響が長期化し自動車生産のサプライチェーン全体を通じて悪影響が広がる恐れも出てくる。そうなれば「間接効果も含めると、20年における実質GDPの0.2%にあたる0.9兆円まで押し下げる」と神田氏は話している。

 3度目の緊急事態宣言は5月11日までとされた。しかし変異株は全国各地に確認されており、実施期間が長期化したり対象地域が拡大したりする可能性もある。神田氏は「急がば回れ」と強調する。感染が収束すれば、観光、飲食、娯楽業などが活気を取り戻し、経済の本格回復の道筋が描きやすくなる。「今回はワクチン接種強化期間と位置づけ、柔軟な運用・手厚い財政面支援を心がけるべきだ」(神田氏)としている。

(松本治人)

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