BizGateリポート/経営

変異株流行・ワクチン遅れならマイナス成長 神田慶司・大和総研シニアエコノミストに聞く

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

補正予算、30兆円規模の可能性

 接種率が想定シナリオの半分程度の約25%にとどまった場合はさまざまなリスクが浮上する。神田氏は「コロナの実効再生産数(1人の感染者が他人にうつす平均人数)の上昇圧力がワクチン普及の抑制効果を上回り21年度の終わりごろには緊急事態宣言が再発令される可能性が高い」と予測する。

 変異株に関して神田氏は「これから半年間程度は特に、人出の増加が感染拡大に直結しやすくなる可能性がある。とりわけ東京都では慎重な経済行動が欠かせない」と警告する。昨年11月には東京の小売店、娯楽施設などへの人出が増え、コロナ禍前の8割超にまで膨らんだ。こうした水準まで人出が急速に回復し、変異株の流行とワクチン接種の遅れが重なると、21年度の経済成長率はマイナス0.7%まで落ち込む。ただ「まん延防止等重点措置」にで人出を適切に抑えることができれば、7月には 1 日当たり 180 人程度まで減少させることも可能だとしている。

 第3のポイントは補正予算だ。「財政支出の規模はGDPギャップ(潜在GDPと実質GDPとの差)が目安になる」と神田氏は分析する。大和総研の試算では1~3月期はマイナス約28兆円。昨年末に成立した追加経済対策で21年度予算にコロナ危機対応費が盛り込まれたものの、足元の感染再拡大を受けて、補正予算は30兆円規模を軸に議論される可能性があるという。コロナ禍の影響が大きい企業への支援、雇用維持、ワクチン接種体制の強化――の3点への重点的な配分が必要だと神田氏は強調している。

 製造業や一部のサービス業が回復する一方で「観光・飲食・娯楽産業では、販路拡大やコスト削減など企業努力だけでは乗り切ることが困難なケースもある」と神田氏。時短協力金では規模・形態によって支給額を見直したり、対象企業を追加したりすることが求められるという。さらに失業率抑制に大きな効果があった雇用調整助成金の特例措置について神田氏は「メリハリを付けながら延長すべきだ」としている。

 見落としてはならないのがワクチン接種体制の強化だ。米国のバイデン新政権は発足後100日までに1億回のワクチン接種を実現すると公言し58日間で達成した。菅首相は、6月末までの1億回分のワクチン確保を表明したものの、国民全体の接種が終わる時期については明言していない。地方団体の経費補助などが政策課題に上がっている。神田氏は「感染が収束すれば経済全体の需要不足は急速に縮小する。ワクチン接種推進が最大の経済対策だ」と位置づけている。

(松本治人)

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。