起死回生 ~崖っぷちからの反転攻勢

伊勢の老舗食堂、コロナ下 「AI頼み」でにぎわい復活 ゑびやのエビラボ 混雑予報 外販も

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 会社の経営は山あり谷あり、波乱の連続である。谷底が見えるほどの崖っぷちに立ったとき、経営者はどう考え、どう行動したのか。今回は、危機に陥った食堂と土産物店を再浮上させるために立ち上がった有限会社ゑびや、および関連会社である株式会社EBILABの代表取締役社長を兼務する小田島春樹氏に話を聞いた。

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静まり返る食堂と土産物店

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、最も深刻なダメージを受けた産業のひとつが飲食業であることは間違いない。客足の途絶えた観光地の土産物業も同様だろう。

 三重県の伊勢神宮の内宮に続く参道に面し、主に参拝客向けに山海の幸を提供する「ゑびや大食堂」、食堂に隣接する土産物店「ゑびや商店」も例外ではない。

 両店舗を運営するゑびや、およびその関連会社であるEBILAB(エビラボ)は、IT(情報技術)を駆使した施策によってこの危機を乗り越えようとしている。

 ゑびやとエビラボの代表取締役社長を兼務する小田島春樹氏が最初に危機感を覚えたのは、2020年2月のこと。「新型コロナに関する海外の情報を注視していたので、このままいくとゑびやもまずい状況になると思いました」と小田島氏は当時を振り返る。

 エビラボはかねて伊勢市内にセンサーを設置し、通行者の数をモニタリングしてきた。そのデータによると、一度目の緊急事態宣言が発出された20年4月の時点で、伊勢神宮の参拝客数は前年の8割減。参拝客数とゑびや大食堂およびゑびや商店の売り上げは高い相関関係にあり、両店舗の来客者数も大幅に減った。その後、伊勢神宮の駐車場が閉鎖されたこともあり、人通りが完全に途絶える事態に。

 小田島氏は通行者数が1500人を下回った時点で両店舗を休業することをあらかじめ決めており、事実、4月5日にその通りの結果となった。開店しても赤字になることを見越して翌日から両店舗は休業。「当時は雇用調整助成金などの制度もまだ十分に整っていなかったので、まずは企業として出血を抑える必要があると思ったんです」と小田島氏は語る。

 「新型コロナのいちばんの問題点は、人々を不安にさせることです。だから私は休業中も、パートやアルバイトも含む全従業員に給与を100%保証する方針を決めました。少しでも不安を解消できればと思ったんです」(小田島氏)

 店舗の休業中、従業員にはオンラインで接客やマーケティングに関する研修を実施し、モチベーションを切らさないように努めた小田島氏。一方では国の制度を利用して会社の運転資金を集めたが、それでもキャッシュフローはマイナスに転じた。この危機を乗り越えるため、エビラボは新たなサービスをゑびやと共同開発し、市場に投入する。

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