アフターコロナの働き方

能力限界はウソ!「70歳定年」はジョブ型導入の好機 同志社大学政策学部教授 太田 肇

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 高年齢者雇用安定法が改正され、今年の4月から事業主に70歳定年の実現へ向けた努力義務が課されることになった。いっぽうで多くの企業は、新型コロナウイルス禍のもとでテレワークが広がったのを機に、従来の「メンバーシップ型」雇用から「ジョブ型」雇用への移行を模索している。そこに立ちはだかる壁の厚さを考えたら、「70歳定年」こそ、ジョブ型へ移行する一つのステップになるのではなかろうか。

30代、40代で「能力の限界」はほんとうか?

 興味深い調査結果がある。

 かなり古くなるが、日本生産性本部は1988~90年に日本、アメリカ、イギリス、ドイツの代表的な大手企業の研究所で働く技術者1774人を対象に意識調査を行った。そのなかに「あなたの周囲を見て技術者として第一線で活躍できるのは、平均的にみて何歳ぐらいまでとお考えですか」という質問がある。

 結果をみると、技術者として第一線で活躍できる平均年齢に、日本と他の3カ国の間に顕著な差があらわれている。日本では「30代後半」と「40代前半」が合わせて6割を超えるのに対し、他国ではほぼ1割かそれ以下にすぎない。そして他国では「年齢に関係ない」が7割以上を占めている(福谷正信『研究開発技術者の人事管理』中央経済社、2007年)。

 この極端な違いは、いったいどこからきているのか?

 常識的に考えて、日本人と欧米人の脳に器質的な大差があるはずはない。教育制度や仕事内容に差があるとしても、その影響はかぎられたものだろう。

「加齢による能力低下」は制度の産物

 私はその主な原因が、雇用制度による「見せかけの限界」であると解釈している。

 その理由はこうである。脳科学者も言うように人間の頭脳は使い続けているかぎり加齢により急激に衰えるわけではない。むしろ年をとっても少しずつ成長していくという説もある。いっぽう年功制のもとでは50歳前後まで給与や職位が上がり続ける。その結果、かりに能力が年齢とともに少しずつ上がっていったとしても、給与や職位はそれ以上に上がっていくので能力とのギャップがだんだん広がっていく。つまり40代、50代になると給与や職位に見合った貢献ができなくなるのだ。そこで「能力の限界」が指摘される。「限界」は処遇に照らした相対的なものなのである。

 それに対して管理職の場合、仕事の成果は部下や組織によって決まる部分が大きいので、個人の能力や成果はとらえにくい。たとえ能力が低下していても報酬に見合った貢献をしているようにみえるのである。そのため第一線で仕事をしたいと思っても、一定の年齢になると役職に就かざるをえないのが現状なのである。

 このことは技術者にかぎった話ではなく、多かれ少なかれ大半の職種に当てはまると考えられる。

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