楽しい職場学

笑い少ない日本の職場、コロナ下で加速も 組織と笑い調査 西武文理大学サービス経営学部専任講師 瀬沼文彰

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 今回は、組織のなかの様々な笑いについてデータを頼りに考えてみたい。20~60代の働く男女を対象にした調査を参考にすると、日本の組織内の笑いやユーモアは多いとは言えない結果がでた。同時にいくつかの笑いの問題点も見えてきた。コロナ禍でコミュニケーションが大きく変容しつつあるいま、笑いの現状を通して組織内のコミュニケーションの問題点を検討してみたい。

 調査「日本の組織での笑いとユーモアの実態調査」は2020年2月25日~27日、コロナウィルスの危機がメディアでも連日扱われるようになってから1ヶ月半ほど過ぎた時期に行った。調査から1年経過しているものの、以下、3つの点で意義があるはずだ。(1)調査の結果から見えてきた笑いの実態は、コロナ禍の21年の組織内のコミュニケーションの問題とも強く関連している(2)日本に独特なコミュニケーションは、リモートワークが導入されても大きく変化していない(3)笑いのコミュニケーションはコロナ禍で新しい現象が生じたり、変化したりしていない――。笑いやユーモアの調査自体は頻繁に行われることがないが、笑いの研究者として、笑いは、日常を映す鏡でもあるので、本データを参考に組織内のコミュニケーションの問題を検討し、職場の楽しさを作るためのヒントを探りたい。

笑うのは職場よりプライベート

 調査では「この1週間、【プライベート】で、どのくらい笑いましたか」「この1週間、【職場で】~」とたずねてみた。選択肢には、「まったく笑っていない」(以下:「まったくない」)「週に1、2日」「週に3、4日」「週に5、6日」「ほぼ毎日」「家族や友人と会っていない」/「同僚・先輩・後輩と会っていない」(以下:「会っていない」と省略)を用意した。なお、この調査では、調査対象者が正確に笑った日数を問うものではなく、自分のなかで、自分がどのくらい笑っていると思うかという「笑いの頻度に関する自己イメージ」を想定した。

<笑った日数(%)>

 一目瞭然、職場では笑いが減少する。職場は、まじめで、真剣な場、プライベートは、遊びやくつろぎの場であるため当然の結果かもしれない。だが、心理学者で国際ユーモア学会の会長でもあるR.A.マーティンが述べているように、アメリカでは、「近年職場におけるユーモアの量の増加がもたらす有益性に多大な関心が集まっている。ユーモアを生み出すことが奨励されるような、より楽しい職場環境は、より幸福で、健康的で、ストレスが少なく、より生産的な仕事へのエネルギーを生み出し、よりよい社会的なやり取りを労働者と管理者の間に生み出し、より多くの創造的思考や問題解決をもたらすことを多くの人々が示唆している」(R.A.マーティン『ユーモア心理学ハンドブック』(2007原著=2011翻訳版)p.433-434)。

 このような面をふまえると、職場の笑いをもっと増やせるような工夫が各組織のなかで必要だと言ってもよさそうだ。特に、笑いは、周りの人たちに感染していく性質があるため、自分の笑いがほかの人の笑いを生むこともある。いまこのときが楽しいかどうかは自分では分かっていても、周りには表情や笑いの表出がないと伝わらない。こうした意味で笑いは、組織内の楽しさのバロメーターにもなる。なお、調査結果からは、約1割の調査対象者は、笑いが1週間で「まったくない」と認識している。働き方や状況にもよるが、疎外感や信頼感、自分の印象などの面で、組織内のコミュニケーションの問題が少なからずこのようなデータに浮かび上がってくるのではないだろうか。組織のメンバー全体を巻き込めるような一体感や誰とでもコミュニケーションを取りやすい雰囲気作りなどの問題ともつながりそうだ。

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