楽しい職場学

笑い少ない日本の職場、コロナ下で加速も 組織と笑い調査 西武文理大学サービス経営学部専任講師 瀬沼文彰

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笑いのコミュニケーションの見本は?

 最後に、笑いやユーモアはセンスだけではなく、日々の学習やちょっとした意識によって高めていくことができるというのが、本連載で繰り返し論じてきたことだ。その関係として以下のような質問を調査対象者にたずねてみた。「あなたが人を笑わせる際に手本としているのはどのような人ですか」という質問に対して、「親」、「兄弟姉妹」、「同性の友人」、「異性の友人」、「同僚」、「職場の上司」、「学校時代の先生」、「落語家・講談」、「お笑い芸人」、「政治家」、「YouTuberなどネット上の有名人」、「その他」の選択肢を用意した。1位に選ばれた割合が最も高かったのは、「お笑い芸人」の23.6%、「同性の友人」の22.5%であった。ちなみに、「同僚」は14.0%、「職場の上司」については6.7%であった。

 職場で上司のユーモアセンスが高く、そこから学ぶことができるようになると、組織内の笑いはもっと増えそうだ。笑いのセンスや笑わせることにコミュニケーション能力の断片が少なからず出るものだとすれば、部下にはコミュニケーション能力が新卒時から求められるものの、上司にはそれが必ずしもあるわけではないと仮説を立てることもできる。少なくとも笑いやユーモアという面においては、それらがあったとしても、部下からすると模倣する対象としては考えられていない。この点も改善していく余地はありそうだ。

 ちなみに、1位に選ばれる割合が最も高かったお笑い芸人は、男性が28.1%、女性が13.1%だった。女性にとってお笑い芸人はロールモデルにはあまりならないようだ。近年、お笑いの世界もポリティカルコレクトネスの笑いになりつつあるなかで、女性の芸人は変化しつつある。そのため、視聴者側の意識にも今後何か変化が見られるのかもしれない。

 いずれにしても、こうした数字上のデータと自分の組織の比較を通して笑いやユーモアから組織内のコミュニケーションの問題点を洗い出してみることもできるのではないだろうか。楽しい職場の実現にはコミュニケーションの点検はとにかく重要である。

<調査概要>
本調査は、西武文理大学の田村尚子教授と共同で実施した。概要は以下の通り。2020年2月25日~27日、全国の20歳から69歳までの働く男女を対象にオンラインで実施(楽天インサイトに委託)。1000名(男性702人、女性298人、20代63人、30代209人、40代360人、50代278人、60代90人)から有効回答を得た。調査では笑いとユーモアについて様々な質問をしたがそのなかから、本稿では、組織の笑いの特徴と課題を論じるために、特徴的なものを取り上げた。
瀬沼文彰(せぬま・ふみあき) 西武文理大学サービス経営学部 専任講師
日本笑い学会理事、追手門学院大学 笑学研究所客員研究員。1999年から2002年まで、吉本興業にて漫才師としてタレント活動。専門分野は、コミュニケーション学、社会学。研究テーマは、笑い・ユーモア、キャラクター、若者のコミュニケーション。単著に、『キャラ論』(2007、スタジオセロ)、『笑いの教科書』(2008、春日出版)、『ユーモア力の時代』(2018、日本地域社会研究所)など。

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