楽しい職場学

笑い少ない日本の職場、コロナ下で加速も 組織と笑い調査 西武文理大学サービス経営学部専任講師 瀬沼文彰

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笑わせることが少ない日本の組織

 次に、笑わせることについて、「この1週間、【プライベートな場で】どのくらい笑わせていますか」「この1週間、【職場】~」「この1週間、【取引先・顧客】」とたずねてみた。

<笑わせた日数(%)>

 笑わせることについては、プライベート、職場、取引先・顧客の順に「ほぼ毎日」の割合が減り、「まったく」の割合が増す傾向があった。結果を見る限り、日本の組織では、そもそも、誰かを笑わせるということ自体が少ないように思える。それは、笑わせることに対してハードルが高い時代を意味するのかもしれない。笑いの量と比較する限り、多くの人は、誰かを笑わせようとして笑うというよりも、偶然起こった何かで笑ったり、ウケを狙った発言ではないことをきっかけに笑ったりすることが多そうだ。しかし、前述した通り、笑わせる=ユーモアは組織で活用できることをふまえると笑いを学習して笑わせる文法を手に入れていくことは今後の課題となるのではないだろうか。この点は本連載でも繰り返し述べてきたことなので改めて強調しておきたい。

女性の方がよく笑う傾向

<プライベート笑った日数(男女別、%)>

<職場で笑った日数(男女別、%)>

 次は、笑った日数を男女別で見てみるよう。データを見るかぎり女性の方が男性よりもよく笑っていると言える。国際的にもこの傾向は各種調査からくっきりと出てくる。日本でも、質問内容は異なるものの、朝日総研リポートが2004年に1921人を対象に行った笑いに関する調査で「あなたは最近、よく笑っていますか。あまり笑っていませんか」という質問に対して「よく笑っている」の割合は男性56%、女性67%、「あまり笑っていない」は、男性35%、女性24%であった。とはいえ、「よく笑うのは女性である」と単純に断言してしまっていいのだろうか。次に論じる愛想笑いとの関係をふまえてとらえる必要がありそうだ。

「上司に愛想笑い」でストレスも

 「この1週間、あなたは職場でどのくらい愛想笑い(本心とは異なる表面上の笑い)をしていますか」と質問し、選択肢には、「まったく」「週に1、2日」「週に3、4日」「週に5、6日」「ほぼ毎日」を用意してみた。結果、愛想笑いは、役員・経営者は、それぞれ5.9%、4.6%で、「ほぼ毎日している」が少なかった。一方で、一般の16.8%、係長・主任の12.8%、課長、部長の8.7%が、「ほぼ毎日している」と回答した。容易く想像することができるが、上司に対して愛想笑いが向けられる傾向は数字の上からも読み取れる。

 また、世代別でみてみると60代は愛想笑いを「まったくしていない」が43.3%、「ほぼ毎日している」が5.6%だったことに対して、20代は「まったくしていない」が12.7%、「ほぼ毎日している」が28.6%であった。年齢によって愛想笑いは少ない・多いがあるようだ。たとえ、数字上、笑いが多くても、愛想笑いでは、日々ストレスが溜まりかねない。

 男女比については、男性の「まったくしない」が30.9%、女性の「まったくしない」が20.1%、男性の「ほぼ毎日」が8.8%、女性の「ほぼ毎日」が20.1%であった。組織では、女性の方が愛想笑いをする傾向があり、前述した笑いの日数はどこまでが愛想笑いなのかという新たな疑問が生じる。サービス業や営業職などで愛想笑いをせざるを得ない、あるいは、それを過剰に求められるということも笑いの問題点で、感情社会学という領域では、労働者の内面の感情や気持ち、及び、コミュニケーションとして表出しなければならない感情はストレスや労働者の負担になりかねないという意味で問題として扱われているものの日本では議論の対象にすらなっていない。心で労働をする時代、このような面もバランスを考えていく必要がありそうだ。

 また、組織内でも、人間関係のなかで、面白くないのに笑わざるを得ないのであれば、非常にストレスフルでコミュニケーションの大きな問題になりえる。面白くない笑いの強要という意味で「笑いハラスメント」とも言われてしまう時代であることも忘れてはならない。笑いの量だけではなく、質についても考えていかなければならない時代になってきている。

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