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ベトナムの有名日系ピザ店「4P's」 コロナ下の進化と真価 都留文科大学教授 佐脇英志

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 幸運だったのは、ロックダウンの1か月前に経験豊富なCTOがジョインし、苦しい中にも関わらず、常に前向きに対応していったことだ。LINE、フェイスブックのメッセンジャー、Zalo(ベトナムで最も利用者の多いSNS)の注文に対応し、かつ配達者がどこにいるか一目でわかるトラッキングサービスを開発した。トラッキングサービスの施策により、待っている顧客に対し見える化でき、配達時間などの問い合わせは急激に減った。対応スピードも、工夫を重ね、30分以内配達率をベンチマークに、常に追い続けた。その結果、2021年3月時点では、30分以内配達率65%を達成し、オーダー数も過去最高となった。オーダーからの配達到着時間平均は当初の63分から33分まで縮み、顧客満足度も5点満点で4.64になった。デリバリー事業のミッションとした Delivering “Wow” Sharing "Happiness“(驚きを届けて幸せを分かち合う)の達成にはまだまだというが、従業員達が寝食を忘れて頑張ってくれた結果に益子氏は手応えを感じている。

 加えて、2000人の従業員の雇用を維持するために、あらゆることを試みた。ブドウの栽培からこだわり、保存料を極力抑えたナチュラルワインをイタリアから輸入した。また、冷凍ピザ、冷凍パスタ等の製品開発を行い、販売に踏み切った。今まで、品質も高くおいしいレストランという評判を維持してきただけに、失敗すればブランドを毀損しかねず、苦渋の決断であったが、雇用を維持していくための売り上げがどうしても必要だった。

コロナ下でも社会貢献・環境配慮忘れず

 厳しい状況の中でも、社会貢献は忘れない。社会、人々に貢献することによって、自分たちの心が豊かになり、はじめて自分たちが幸せになれるという考えである。

 子供たちの食育を兼ねて、「Pizza land」という施設を実験的な試みとしてオープンしたり、家から出られない家族のためにZoomで、炊飯器とフライパンで作れるピザのワークショップを行った。

 デリバリー事業がまだうまくいかないときも、最先端でコロナに立ち向かう病院に何度もピザを届けた。従業員が自ら率先して、北部の寒村の貧しい子供たちにピザを届けることをしたりもした。さらに、学校にも無料でピザを届けた。9月21日のワールドピースデイでは、「Make the World Smile for Peace(世界を笑顔にして平和を)」というビジョンを掲げ、アメリカ・中国、イスラエル・パレスチナ、インド・パキスタンと対立する国・地域の食材で作った3種類の創作ピザを売り出した。売り上げは、すべてユニセフに寄付した。この社会貢献の思想は従業員に浸透しており、様々な社会貢献の提案が従業員から次々に上がってくるという。

 環境への配慮も忘れない。デリバリー事業を機に、木のフォーク、紙の皿やフォークを採用した。キャッサバから作ったバッグの開発、チーズの副産物であるホエーのビールへの使用、鳥カゴを使わないで飼育した鶏の卵などのアイデアが次々に実現している。利益にならないアイデアでも実行に移せるのは、社内にサステナビリティ(持続可能性)の思想が徐々に確立されつつあるからである。

 さらに、美しいビーチで有名なダナンで醸造されている柚子(ゆず)ビールの売り上げの1%は、ダナンの海をきれいにするNGOに寄付している。

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