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仕事ができない高学歴社員はなぜ生まれるか 同志社大学政策学部教授 太田 肇

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責任転嫁できない環境をつくること

 その点、欧米では半年から1年といった長期のインターンシップで能力と適性を見定めて採用するし、採用後は個々人に権限と責任を与え仕事を任せる。したがって、少なくとも自分にどれくらい仕事の能力があるかを知ることができる。

 いっぽう日本では学歴(学校歴)中心で、あとは簡単な適性検査と面接くらいで採用するケースが多い。最近はインターンシップを取り入れる企業も増えてきたが、それでも期間は数日からせいぜい1カ月程度である。そのため仕事に必要な能力や適性はほとんどチェックされていないといってよい。

 それでは自信過剰型の社員が現れるのは当然である。

 問題は、彼らにほんとうの実力をどうやって自覚させるかである。

 対策として、まず仕事を思い切って任せてみること。そして顧客や市場の中に出すことである。上司や社内の評価には文句を言えても、顧客や市場の評価は受け入れざるを得ない。つまり、責任転嫁ができない環境をつくり、自分の実力を冷静に見つめさせる必要がある。

 ただ、それでも自分の「優秀さ」「頭のよさ」を疑わないかもしれないし、逆にリアリティー・ショック(理想と現実のギャップ)で挫折する恐れもある。そこで問われるのが、無条件に彼らを優秀だと信じ込ませてきた学歴社会と、彼らをエリートとして迎え入れた会社の責任である。

 いずれにしても自分の実力を過大評価させてきた以上、彼らをいかにフォローするか、難しい課題が残る。

太田肇(おおた・はじめ)
同志社大学政策学部・同大学院総合政策科学研究科教授。神戸大学大学院経営学研究科修了。経済学博士。専門は組織論、とくに「個人を生かす組織」について研究。元日本労務学会副会長。組織学会賞、経営科学文献賞、中小企業研究奨励賞本賞などを受賞。『「承認欲求」の呪縛』(新潮新書)、『「ネコ型」人間の時代』(平凡社新書)、『公務員革命』(ちくま新書)、『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)、『個人尊重の組織論』(中公新書)、近著に『「超」働き方改革』(ちくま新書)など著書多数。

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