フィンテックサミット2021特集

俊敏かつ実効性のあるDXで社会に新しい価値を提供し続ける アフラックが掲げるDX戦略の凄み 取締役上席常務執行役員 二見通氏に聞く

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 FIN/SUM2021に協賛している生命保険大手のアフラックは、契約者に対し、契約後の各種手続きのフォローを行うAI(人工知能)付き3Dアバターチャットボットの導入や、リモートワーク時の社内コミュニケーションを支援するAIロボットの導入など、社会から高い注目を集めるDX(デジタル・トランスフォーメーション)施策を次々と成功させている。昨年、経済産業省が定める「DX認定事業者」の認定を初めて取得するなど、今やわが国のDXの旗振り役的存在だ。革新的な取り組みを支えているのは何か。同社のCDIO(チーフ・デジタル&インフォメーション・オフィサー)である二見通氏に話を聞いた。

DXの本旨はあくまでも

コアバリューに基づくCSV(共有価値の創造)経営の実践

――アフラックはDXによるイノベーションを次々と成功させています。革新的なDX推進のモチベーションはどこにあるのでしょうか。

 当社は、企業理念やブランドプロミスに表されるコアバリューに基づき、社会と共有できる価値を創造していく企業経営(=CSV経営)を実践しています。また、企業理念の一つに、「新たな価値の創造」があり、我々は5大ステークホルダー(お客様、ビジネスパートナー、社員、株主、社会)に対する新たな価値の提供を掲げています。DXはそのための手段であり、さらに突き詰めるならば、お客様の「生きる」を創るための手段の一つです。

 ひと昔前、デジタル化はIT部門のみの課題でしたが、今はデジタルの影響が及ばない領域を見つけるほうが難しい時代であり、特定事業をデジタル化するのではなく、デジタルを前提とした企業経営が求められています。だからこそ、分野や部門を限定せずに広く、お客様サービス、代理店サービス、社内業務、すべての業務を俯瞰(ふかん)した上で必要なDXを推進し、その結果、お客様の「生きる」を創ることが、当社のDXの本旨です。

――昨年10月、生命保険会社としては国内初となるオンライン相談システムを全国の代理店で導入を開始しました。

 オンライン相談システムとは、保険商品の提案や説明、契約までをオンラインで完結できるシステムです。お客様はご自宅に居ながら、スマートフォンなどで営業担当者から説明を受けることができ、契約に必要な署名もオンラインで済ませることができます。

――システムを構築したのは、コロナ禍による対面コミュニケーション減少の危機感からでしょうか。

 コロナ禍はきっかけの一つではありますが、背景にはもっと大きな課題認識がありました。ここ数年、若い世代の保険への関心が低下しており、また自宅に人を招くことを好まないお客様も増えてきたため、保険営業の担当者がお客様に会うことが非常に難しくなっていました。また、営業担当者の業務効率を改善することも大きな課題の一つでした。

概念のブラッシュアップより

成果の積み上げを重視

――システムの開発から稼働までの期間はわずか半年と、スピーディーさでも注目を集めました。

 大きな原動力となったのは、アジャイル型の働き方です。当社は、2019年にアジャイル推進室を設立し、アジャイル型の働き方を全社に浸透させています。アジャイル型の働き方とは、3~6カ月程度の期間で一定の成果を出し、それを評価・分析して次の段階で改善する、この一連のプロセスを反復しながら進めていく働き方です。

――プロジェクトの採否を決める際の判断基準はありますか。

 大きく3つの基準を設けています。1つ目は費用対効果、2つ目は実現までの期間、3つ目は、“新たな価値”が創造できることです。これにより、常に、パートナー企業と共にチャレンジを楽しんでいます。当然、開発を始める前のリスク分析も重要ですが、私の場合、着手前の段階で6割程度成功の見込みがあれば先に進めます。ただし、残り4割のリスクに関しては、着手前にしっかりとリスクが顕在化した時の対処方法を決めておく必要があります。リスクを把握しておくことで、問題が顕在化した場合でも、それら問題に迅速に対処できるのです。

 デジタル領域の技術進化の速度は非常に早いため、リスクを完全に排除してから開発に着手するような進め方では、アイデアそのものが陳腐化しかねません。同じ理由で、PoC(概念実証)も実施しておらず、「走りながら考える」感覚を大事にしています。

異業種連携により

お客様との接点拡大に期待

――FinTechやInsurTechの潮流を考えると、キャッシュレス化は今後、避けて通れない課題の一つです。どのような施策を実行しますか。

 時代の流れへの対応はもちろん、保険料のお支払い方法や保険金の受け取り方法を多様化させることは、お客様の「簡単・便利」を実現するという意味でも非常に重要だと考えています。各種決済サービスと連携し、保険料のお支払い方法や給付金の受け取り方法の拡充に力を注いでいます。

 また、将来のデジタル通貨の普及を見据え、各種決済に対応できる「アフラックウォレット」を開発し、3月には、その一部の機能として、株式会社マネーフォワードとの協業による家計簿サービスの提供を開始しました。今後、共通ポイントによる保険料のお支払いや、給付金を共通ポイントで受け取れるサービスを導入するなど、幅広いお客様ニーズに対応するための各種決済プラットフォームとして活用していきます。

――アフラックは、規模や業種に関わらず多数の企業と連携しています。

 当社は約1,500万人のご契約者様、約2,500万の保有契約件数を保持しており、他業種、他企業のお客様層と重なることも少なくないと考えています。また、生命保険業界特有の課題として、契約後、多くの場合は給付金のお支払いまでお客様との接点が極めて少ないことが挙げられます。業種や規模に関わらず多くの企業と連携することはお客様との接点拡大にもつながり、その結果、お客様へは最適なタイミングで最適な商品やサービスが提供できるようになると考えています。

 また、スピーディーにDXを実行実現するためにも、高度なデジタル技術を持つ企業との連携は欠かせません。過去に、台湾のベンチャー企業の経営者に会って技術力の高さに感銘を受け、すぐにAIを活用したシステムの開発を依頼しました。そして、1カ月後には開発を開始し、段階的な展開を経て、1年後には全社展開に成功しました。この経験が、高い技術力をもつ企業と連携することの重要性を確信するきっかけとなりました。

――アジャイル型の働き方や異なる強みを持つ企業との連携を進める中で、大事にしていることはどのような価値観ですか。

 まず一つは、“失敗を恐れず挑戦する”ということです。失敗しようと思って取り組んでいる人はだれもいません。第一歩を踏み出すこと、失敗を次のより大きな成功へ結びつけることが重要と思っています。次に、システムメンバーに対しては2つの“そうぞうりょく”を高めてほしいという話をしています。1つは、イマジネーションの意味の想像力です。この先の世界はどうなっているのか、お客様はどのような新しい価値を求めているかなど、未来を想像する力が大切です。今ある商品やサービスに縛られず、徹底して考え抜く力です。もう1つは、クリエーションの意味の創造力です。想像した世界を想像だけに終わらせず、実際にそれらを創り出すことが更に重要です。お客様へ提供したい新たな価値を創り出すこと、サービスや商品を創り出す力です。

 当社は、「生きる」を創るリーディングカンパニーとして、スピード感を持って5大ステークホルダー(お客様、ビジネスパートナー、社員、株主、社会)に新しい価値を提供していきます。今後も、お客様の「生きる」を創るために、様々な可能性を追求し続けます。

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