SDGs時代のパーパスブランディング

独自性失う?パーパスブランドのジレンマ ブランドストラテジスト 大橋久美子

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

 ブランドは消費者(生活者)の心の中の認識だ。これだけ情報が氾濫している中で認識されるためには他にはない独自性が必要だということになるのだが、パーパスをベースにするとブランドがどれも似てきてしまうという問題が出てくる。なぜならブランドが理想として描き出す未来はみんな共通のものになりがち。そして、透明性に基づく信頼を獲得したいブランドは、誠実で真面目なブランドイメージになりがちだからだ。

 こうしたパーパスブランディングに対して警鐘を鳴らすのは、サステナブル先進国デンマーク出身で10年前からパーパス型ブランドコミュニケーションを提唱し、世界最大の広告祭「カンヌライオンズ」でSDGs部門の審査員も務めた、つまりパーパスブランディングのパイオニアであるトーマス・コルスター(Thomas Kolster)氏だ。彼は、昨年『ヒーロートラップ(ヒーローの罠)』という著作を発表、世にあふれかえるパーパスブランディングの問題点を指摘している。最もパーパスブランディングを知る人物であるコルスター氏の指摘は、私たちの課題の先取りとなっているに違いなく、日本の今後に対する示唆を与えてくれるものとなるのだろう。こうした思いで、彼にインタビューをしてみた。

パーパス追求するブランド「似たり寄ったり」に

――日本でもパーパスが重要という認識が広がり、パーパスを軸にしたブランドコミュニケーションも増えていますが、欧米ではどのような状況でしょうか?

「10年前はパーパスの伝達自体が新しく、差別化と共感をうむ力があったが、今やどのブランドも、自ブランドには正義や環境など社会に対する大きな役割を果たす高次元のパーパスがあると訴えるようになってきている。『自分たちは正義の味方だ!』『未来をよくするためにこんな活動をしている』、そんな風にまるでブランドがヒーローのようになっているが、消費者からするとどれも似たり寄ったり。真剣にパーパスを追求したり社会に意味のある変化をもたらしているブランドがどれなのか見極められなくなってしまっている」

――若い世代は、SDGsへの関心は高いですよね?

「もちろん、若い人たちは本気で地球の未来や環境について考えている。ブランドがそれに対して答えていかなければいけないのは当然だ。だから製品やパッケージのイノベーションで真剣に答えていく必要がある。」

「しかし、正義や環境は、日常生活の中で消費者が常に関心を持っているものなのかどうかというと、そうではない。また『未来のために、こんなことを目指している』というまだ結果もわからないブランドのヒーロー宣言だけでは、消費者は自分ごと化できない。ブランドというのは消費者(生活者)との関係の中で成立するものだ。自己満足や一方的な宣言ではブランドは成立しない。大切なのは、そのブランドが本当に自分に関連していること(Relevant)、そして本当に意味があること(Meaningful)。主役であるユーザーにとって、自分の生活にちゃんと意味のある違いという結果をもたらしてくれるかどうかだ」

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。