フィンテックサミット2021特集

新しい可能性を切り開くブロックチェーン「Symbol from NEM」 NEMグループCEOのデイビッド・ショー氏に聞く

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 「『NEM(ネム)』はブロックチェーン(分散型台帳)技術を用いた非中央集権的で新しい経済圏をつくることを目指したプロジェクトです。暗号資産(仮想通貨)と、その台帳として様々な企業のニーズに応えるのがブロックチェーンです。まさに新しい経済を切り開くという使命感に満ちたプロジェクトなのです」――。こう力説するのはNEMグループのデイビッド・ショーCEO(最高経営責任者)。15日に、次世代のブロックチェーンとしてSymbolがローンチされる。ローンチを控えた今、ショーCEO にNEMグループの理念やSymbolの位置づけについて聞いた。

ブロックチェーンの“開拓時代”

 ――「新しい経済運動」は大胆な宣言ですが、その趣旨を聞かせてください。

 ブロックチェーンによって実現した新経済が機能する世界は、計り知れない可能性に富んでいます。可能性はまだ生まれたばかりなので、現時点ではすべてのプレーヤーに伸びしろがあるため、勝敗を賭けた市場獲得競争にはなりません。各者がそれぞれの発想で、ともにブロックチェーンの開発に取り組んでいます。まさにブロックチェーンの“開拓時代”です。

 ブロックチェーンの世界は従来のITシステムやインターネットと違って、完全に分散型で展開します。分散型モデルでは、皆が平等にデータ上の価値をやり取りできる究極の経済活動の民主化の実現が可能なのです。

 ――NEMグループはブロックチェーンのソフトウエア開発のほかに、暗号資産(仮想通貨)を取り扱ったり、スタートアップへの投資も行うなど、幅広く事業展開をしていますね。

 NEMソフトウェアは、暗号資産とブロックチェーンを効果的に活用してもらうために、事業会社に向けて各種の支援を行います。また、NEMのサービスのさらなる発展に向けて、独自の研究開発を行っています

 NEMトレーディングは社名の通り、トークンの市場で暗号資産取引を行います。フィンテックのイノベーターたちとのやり取りを通じて、ブロックチェーンNIS1(ニスワン)の暗号資産「XEM(ゼム)」の利用を促進してきました。また、3月15日にSymbolが次世代のブロックチェーンとしてローンチされれば、新たな暗号資産となるXYM(ジム)の利用も同時に促進します。

 NEMベンチャーズはブロックチェーンを中心に事業展開している、あるいはその予定のあるスタートアップに投資します。投資といっても実際にスタートアップの育成も手掛けます。

 この3社は相互補完的な役割を持っています。NEMグループはこれらの組織を前提に、それぞれの側面から、強力かつ多面的なブロックチェーン技術の発展を推進しています。

 そして、NEMグループのあらゆる事業活動において、日本は大きな比重を占めており、日本のユーザーのニーズを重視しています。Symbolと同時進行でNEM NIS1に関しても、日本市場へ浸透するよう努めていくつもりです。

NIS1の長所をさらに強化

 ――ブロックチェーン「NIS1」が2015年にローンチされて以来、システムやサービスなどの停止(ダウンタイム)もハッキングもゼロです。NIS1は特に、企業のニーズを重視した設計だと聞いていますが、そのアップデートとなるSymbolはどんな違いがあるのでしょうか。

 Symbolは誰でも自由に利用できるパブリック型とクローズドな利用のプライベート型、双方に対応しています。NIS1の長所をさらに強化するとともに、柔軟性、速度、使い勝手、安全性などを飛躍的に高めたことで、非金融も含めた企業のニーズにぴったり合致しています。

 ――Symbolを活用するとどんなことが可能になるのか、具体的な例はあるでしょうか。

 はい。当社の資本提携先で、中小企業にフィンテックのソリューションを提供する米ウェイヴ・フィナンシャル社は、Symbolを基盤にバーボン・ウイスキーの投資ファンドを立ち上げました。米国ケンタッキー州のバーボン・ウイスキーの名門作り手が顧客です。

 近年はウイスキーも投資対象になっています。ウイスキーは年によっての“出来”の良しあしがあり、価値が変わります。投資家は10年、20年といった長期間熟成した時点での価格の上昇を期待して樽(たる)単位で購入します。作り手は仕込んだばかりのウイスキーの一部、あるいはすべてを売却することによって、運転資金を獲得、同時に価格の変動をヘッジすることもできるわけです。

 ウェイヴ・フィナンシャルはファンドに投資家を募集して、出資金で蒸留所の樽を購入する計画です。ファンドの枠は約1年分の生産量に当たる2万5000個に及びます。一方で投資家は、トークンの形でウイスキーの価値を購入し、そのトークンを保有し、かついつでも売買できるわけです。

 ――NEMグループはかねてより、個性的な用途を開拓してブロックチェーンの適用範囲を広げてきましたね。

 そうですね。リトアニア銀行は昨年、世界初といえる同国の中央銀行デジタル通貨(CBDC)であるLBコインの販売を始めました。LBコインはNEMを使用したものでコレクター向けに発行されました。ウイスキーの投資ファンド以前の例では、スポーツウエア大手のために、ブロックチェーンを市場調査に適用させたことがあります。顧客企業は各国の消費者の嗜好性を把握するために、毎年何千万円相当の金額を市場調査会社に支払ってきました。ところが、ブロックチェーンを活用した結果、調査会社は不要となりました。消費者の嗜好について、スポーツウエア・メーカーが直接、情報収集できるようになったのです。

 調査に参加する消費者たちが、色やスタイルなど自分の好みをブロックチェーンに登録し、その情報を参照するたびに、メーカーは消費者にいくらかのお金を支払います。消費者は情報提供により収入が得られ、メーカーは市場動向をいち早く知ることができます。調査会社を経由する必要がないため、経費も削減できました。

 このようにして、NEMグループはブロックチェーンを、非金融を含む様々な企業のニーズに合わせて、挑戦を重ねています。

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