日経SDGsフォーラム

コロナ越え より良き社会を SDGsと経済の両立、皆が手を携えて

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

 世界の景色を一変させた新型コロナウイルス感染症の猛威から1年。生活の変容を余儀なくされ、地球規模で突きつけられた課題は多い。SDGs(持続可能な開発目標)にもある「すべての人に健康と福祉を」「人や国の不平等をなくそう」といった内容とも深く関わる。SDGsの目標年まであと10年だ。私たちはコロナとSDGsとどう向き合うべきなのか。感染症と環境対策の覇権争いが見え隠れする中で日本の立ち位置を考えてみる。

 CO2ゼロ工場 環境負荷に配慮

 「コロナの前から地球は我々にメッセージを送り続けてきたのです。異常気象、海洋汚染、感染症など。でも我々は気が付かなかった。聞く耳を持たなかった。『人間の便利さだけで地球を使うな』ということを」。サントリーホールディングスの新浪剛史社長はコロナ禍の1年、自問自答を続けた。昨年1月、コロナが流行しだした時期に開かれたダボス会議。参加した新浪氏はその雰囲気に驚いたという。会場からペットボトル入りの飲料が消え、環境活動家らと一緒に壇上に立った「プラスチック削減」のセッションでは、プラスチックを使う飲料会社の代表である新浪氏は質問攻めにあった。

 何もサントリーが無策だった訳ではない。2030年までにグローバルで使用するすべてのペットボトルの材料を再生素材と、ウッドチップなど植物由来の素材に100%切り替えることを既に表明している。グループでも「スコープ3」という目標を掲げ、30年までに原材料調達から物流・販売・リサイクルに至るバリューチェーン全体で、自社拠点以外における二酸化炭素(CO2)の排出量20%削減を目指す先進的な取り組みも進めている。

 それでも社会の目は厳しい。3R「Reduce(減らす)、Reuse(再利用する)、Recycle(繰り返す)」をより踏み込んだ形で、世界に訴え続ける。「現実的には再生ペットボトルがいい」(新浪氏)のは間違いない。

 これまでは地球環境と経済を両立する道は隘(あい)路だったかもしれないが、イノベーションやデジタルが新たな知恵を生み、多くの関係者を巻き込みながら道を広げていくことはできるはずだ。コロナによる社会の激変は私たちに「解決の糸口を見つけ、より良き社会へ向かえ」と背中を押していると前向きに捉えるべきだ。

 その1つが今春、長野県で稼働する「サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場」だ。バイオマス燃料を用いたボイラー導入やCO2排出をオフセットするカーボンクレジットの活用などにより、製造工程におけるCO2排出量が実質ゼロとなる初の工場だ。水も森も育み地域に溶け込む存在を目指す。

 SDGsは個別企業が取り組むものではなく、取引先、地域社会などとも連携し、実践を加速させるフェーズに来ている。

(編集委員 田中陽)

 アジア的な自然発想を経営哲学に――

 コロナ禍で分かったのは多様な社会の重要性だと思います。東京の一極集中から各地域に優秀な人材を配置し、自然の摂理を理解するリーダーに育てることが必要です。そのために自然の大切さを学んでもらおうと、次世代環境教育「水育」として「出張授業」と「森と水の学校」を10年以上前から実施しています。昨年はどちらも対面での活動が難しかったため、映像を駆使した取り組みを始めました。自然への理解も高まったようで、これからは対面とオンラインのハイブリッド型の「水育」を展開したいです。
 今、SDGsは科学的な側面に加えて財務・金融的なプレッシャーから対応を加速させようとしています。このことは否定しませんが、哲学的な自然思想、アニミズム的なアプローチで向き合ってもいいのではないでしょうか。
日本をはじめアジアの国々では自然からのメッセージを受け止める精神、心を持っているはずだからです。日本の大半の企業には経営哲学、理念があり、それらには自然から取り入れたものが多くあるのです。サントリーの理念体系の中に「人と自然と響き合う」は自然を尊敬し、人間性を尊重するといった意味が込められて、不易なものです。
 SGDsを巡って覇権争いをしていても意味はありません。非政府組織(NGO)、ベンチャー、スタートアップや競合社との共創やオープンイノベーションは欠かせません。多彩なパートナリングができることによって森も木も水も山も海も育まれ、その恩恵に浴することができます。
 サントリーは事業領域だけでなく幅広い分野にアンテナを張り、地球からの声を聞くように心がけていきます。

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。